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海外定量調査の苦労
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調査事例

海外定量調査の苦労

2023/03/20
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こんにちは!
リサーチャーの黒田です。
私は、スガタリサーチで国内外の定量・定性調査のプロジェクトマネージメントを行っております。

今回は、海外の定量調査で苦労する点について、リサーチャーの視点で国内定量調査と比較してみました。
苦労する点はいっぱいですが、今回は個人的に特に苦労している3点に絞って、お伝えしたいと思います。


 

① パネルの規模

日本では数百万規模のパネルがありますが、海外では一部の国を除き、大規模なパネルはありません。

そもそも日本のアドホックの定量調査は、7割以上がインターネット調査(※JMRA経営業務実態調査より)が占めておりますが、海外では面接・電話などの調査手法も多く利用されております。
そのため、東南アジア、中東、オセアニア、中南米、アフリカなどの調査では、比較的実施がしやすいインターネット調査だけで目標数を回収できるか毎回心配しております。
日本だけで調査をしていた時は、インターネット調査だけで回収できるのは当たり前と感じておりましたが、海外調査を行ってみてつくづく苦労を感じた点でしたので、一番目に挙げました。

海外調査を行わないと気づきにくいですが、調査の環境として、日本はかなり恵まれていると思います。

 

② 出現率

日本ですとスペシャルパネルなどがあり、出現率の低いターゲットでも結構調査できるのですが、海外では細かいターゲット配信は難しい場合が多いです。
しかも、出現率が低いとサンプル単価が跳ね上がったり、回収自体がストップしてしまうこともあるので、実査開始後の出現率を見るのは、ただただ恐怖という状況です。

そのため、日本で実施するとき以上に、事前の出現率の想定、緩和可能な条件などをしっかり詰めておかないと青ざめることになります。
とは言っても、事前の情報収集や想定が難しいのが海外調査の厄介なところであり、これはという対応はなかなかないのですが‥

ある程度その国での調査数が増えてくれば、対処がしやすくなりますが、ターゲットや商品が異なる場合も多く、基準の数値を作るのはかなり苦労します。

現地の人へのヒアリングもよいのですが、業界関係者と一般人での乖離も多く、鵜呑みにしていると痛い目に逢いやすいです。

日本では、無料の出現率調査も行えるケースもあるので、難易度の高い調査の実施可能性の判断はしやすいですが、海外調査での実施可能かの判断は本当に難しいです。
「出現率」の問題は、胃が痛くなる点では第一位ですが、一番目に挙げた「規模」はそもそも母数的に実施可能かというところもあるので、「出現率」は二番目として挙げました。

 

③ 回答の解釈

海外は民族、宗教、文化、階級、経済格差、発展の状況などの様々な条件が背景にあるため、定量の数字の結果を見る際も、そうした背景を考えながら見ていかないと結果を見誤る可能性があります。
また、国民性の影響のためか評価設問での回答傾向にも違いがでます。
代表的なものですと、日本におけるNPS調査はマイナスに出やすいと言われております。

NPSとは「ネット・プロモーター・スコア」の略称であり、「親しい知人や友人にこのサービス・製品をどのくらい薦めたいか?」を評価設問で聴取し、顧客ロイヤルティを数値化する指標です。
事業の成長率と高い相関があることから、Appleなど欧米の多くの企業が活用しており、日本でも新たなKPIとして注目されております。

NPSは、0~10点の11段階で推奨度を評価してもらい、0~6点を「批判者」、9点と10点を「推奨者」と分類し、「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いて計算されますが、欧米ではプラスの数値になるのがほとんどに対し、日本ではマイナスの数値になることがほとんどです。

この原因として、日本人の回答が中心によりやすい傾向が挙げられますが、この背景には単一民族・島国・集団主義・察する文化など様々な要因があると考えられており、今回のコラムではとても書ききれませんので、別の機会に考察したいと思います。

他にも、適当な回答が多くなる傾向の国などもあり、データのクリーニングなども国ごとに違う対応が必要になりますが、そもそもどこまでを正しい回答とするかの基準作りも苦労するところです。
定量調査は、実施すればそれなりの数字が出るのでやった気にはなるのですが、こうした背景を知らずに回答を解釈してしまうと判断を誤ることにつながります。
無事に実施出来て、結果も出たのでデータレベルでは問題ないが、肝心の判断を間違えないよう背景に精通しなくてはいけない苦労があるため、「回答の解釈」を三番目に挙げました。


 

海外の定量調査で苦労する点はまだまだたくさんありますが、今回は個人的に苦労している3点に絞って、お伝えさせていただきました。
海外の定量調査を行っている方、今後実施を検討している方の参考になれば幸いです。

また、海外調査で出来るだけ「苦労」を減らしたいと考えている方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
過去の「苦労」で得た知見を皆様の調査に反映し、出来るだけ「苦労」が少なくなるように尽力いたします。

最後は営業トークっぽくなりましたが、皆様の反響があればまたコラムを書きたいと思いますので、再びお会いできる日を楽しみにしております!

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