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セーラームーンブームから見た時代のムーブメント
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調査事例

セーラームーンブームから見た時代のムーブメント

2014/06/06
REPORT

子供の頃に好きだったアニメを聞かれたら、20-30代の女子のほとんどはセーラームーンと答えるのではないだろうか。そんなセーラームーンが生誕20周年ということで、様々な記念イベントや限定商品などが登場しセーラームーン世代を沸かしている。

写真①

 

 

 

 

Source:美少女戦士セーラームーン20周年プロジェクト公式サイト  

一般的に漫画やアニメ好きと言えばオタクを思い浮かべる人が多いと思うが、セーラームーンがすごいのは漫画・アニメジャンルであるにも関わらずオタク以外の層にもヒットしている点だと思う。オタク自体、近年主流化しており、2013年に15-28歳の男女を対象に行った大規模調査によると、42.2%mもの人が「自分はオタク」であると回答したという。

(5月26日のスガタリサーチの投稿より:Anisong as the bonding agent for the consolidation of Otaku culture into the global mainstream)

  しかしセーラームーンの反響にいたってはこの42.2%を超えた幅広い層にも広がっているようである。

ではなぜセーラームーンは当時だけでなく、20年経った今、再び盛り上がっているのだろうか?

〇〇レンジャーや〇〇ライダーなど、男の子向けの戦隊物は昔からあるものの、女の子版は長い間なかった。むしろヒロインと言えば「ヒーローの助けを待つ、か弱い美少女」というイメージだったが、「美少女戦士」というカテゴリーを初めて作ったのがセーラームーンなのである。社会現象にまでなったセーラームーンブームを考えると、本当は女の子も戦闘系の物語が好きなのだと言える。しかし、女の子が男の子向けの戦闘系漫画や番組等を見ていると「女の子らしくない」と偏見の目で見られ、自然と女の子が戦闘物を見るのはふさわしくないという考えに洗脳されていたのではないだろうか。

しかしセーラームーンが戦闘物でありつつも広く受け入れられたのは、単に登場人物が戦いに強いだけではなく美しさや可愛らしさ、繊細さも兼ねているからなのかも知れない。つまり、いわゆる「女性らしさ」という点においても女性の憧れ的存在であったからこそ、女の子たちにも見ることが許された戦闘物漫画・アニメだったのではないだろうか。

思えばこの頃から女性の強さが魅力として受け入れられ、「強くなりたい」と思う女性も増えた傾向があるのかも知れない。男女雇用均等法が施行されたのが1986年、セーラームーンが誕生した1992年には育児休業制度が施行されている。つまり専業主婦が主流の時代から、男性と同じ土俵で女性も働く時代へのシフト期だったのである。こういった時代背景もあり、セーラームーンは漫画やアニメの世界において「美少女戦士(戦隊)物」というカテゴリーを作っただけでなく、社会的にも戦う女性の先駆け的存在になったと考えられる。よって、この時期を一種の「ムーブメント」と捉えたい。

更に近年は「肉食系女子」という言葉が流行したり「女性管理職」の増加が政府によって後押しされており、女性が男性と同等に(むしろ男性よりも)強くたくましく生きる時代になっている。そして子供の頃セーラームーンに熱狂した女子たちが、20年たった今それぞれの人生を歩み戦っているのである。その女性たちの多くが今は妻/母親としての家庭の顔と、仕事をする社会人としての顔の両方を持っている。そんな風に家と仕事の切り替えを行う女性と、変身して戦うセーラームーンが重なるのかも知れない。

子供の頃は憧れの眼差しで見ていたセーラームーンが、現在家庭と仕事間を戦い抜く女性にとっては励ましの存在になっているのではないだろうか。つまり20周年記念で再び沸き上がったセーラームーンのブームの要因にはノスタルジーや、もともとのセーラームーン人気というのは当然あると考えられるが、更に「エンカレッジ」というものが大きな要因であると思われる。家庭においても社会においても責任が大きくのしかかる中で、色々完璧にこなさなければ。というプレッシャーと戦いつつも、女性としての魅力を磨き続けなければ。と多くの課題に悪戦苦闘する中で、元祖「美少女戦士」のリバイバルはくじけそうになる自分をエンカレッジしてくれる、待ち望んでいた存在ではないだろうか。

セーラームーンと女性の地位という視点では、今がまさに二度目のムーブメントと捉えられる時代になっているのかも知れない。今度はどのような変化が起こりうるのかまだ明らかではないけれど、セーラームーンにエンカレッジされた女性たちが再び立ち上がる時が来ていると感じる。今回のセーラームーンのリバイバルがブームで終わることなく、何かしらのムーブメントに繋がることを私は期待している。

最後に余談ではあるが、90年代のセーラームーンブームが静まって以降、一部のコアな男性オタクの間では、セーラームーンは(私としては)不本意な性的な対象として見られていた時期があった。しかし今回のリバイバルをきっかけに、セーラームーンが本来のファンである私たちの元に戻ってきてくれたのも、セーラームーン20周年記念による功績だと感じる。

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