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“シェア”する若者たち
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調査事例

“シェア”する若者たち

2014/09/20
REPORT

 

近年、若者世代において、共同生活を目的とした住まいである、シェアハウスの人気が急速に高まっている。シェアハウスを舞台としたテレビ番組のヒットによる後押しもあり、その人気に更に拍車をかけている。

国土交通省住宅局による、「シェアハウス等における契約実態等に関する調査 報告書 (平成26年3月)」によると、2006年以降、シェアハウス運営に新規参入する事業者が大幅に増加している。入居者は2012年時点で、20代前半(23.2%)と20代以後半(36.4%)の若者が全体の約6割を占める。近年では、30代の入居者が拡大し、20代~30代の若者層が入居者のボリュームゾーンとなっている。

国土交通省住宅局 報告書:https://www.mlit.go.jp/common/001046740.pdf

 

photo 1 主なシェアハウス事業者数の推移

 

photo 2 何かのグラフ

 

中でも女性からの人気が非常に高い。これは現代のシェアハウスが、一昔前の古くて狭い一軒家、むさくるしく安さだけが取り得、といったネガティブなイメージを払拭するのに成功した事を表しているのではないだろうか。実際にシェアハウスを運営する各ポータルサイトをのぞいてみても、内装もデザイナー物件を思わせるほど、非常にこだわっており、事業者側も若者層の取り込みを意識しているようだ。広々とした共有スペースがある一方、一人の時間も快適に過ごせる様、個室もしっかりと設備が整っている。

 

photo 3 リビングルーム

 

photo 4 bed room

写真元:東京シェアハウスhttps://tokyosharehouse.com/

現在シェアハウス事業において、トレンドの最先端にあるのが「コンセプト型シェアハウス」である。「コンセプト型シェアハウス」とは、物件に対して様々なニーズに対応した特定のテーマを定めることで、訴求効果を高め入居につなげる、という新しいビジネスモデルである。物件に対しあえてニッチな付加価値を与えることで、他社との差別化を図る。

海に近い立地でサーファー向けのものや、大きなキッチンがあり、頻繁に食事会を開催するような趣味に特化したシェアハウスが目立つ一方、利用者の目標達成を目的とした物件も多い。京都府にある「京都第一トキワ荘。(ご存知の通り、名前は手塚治虫ら著名な漫画家が共同生活を行っていたことで有名なアパートに由来する。)」は入居者を漫画家志望の30歳以下の若者と限定している。入居者にはイラストやデザイン系の仕事の斡旋、技術向上のための講習会などの特典がある。入居後に、自分の作品が漫画雑誌等の媒体に掲載された際には、その後一年間は家賃が5000円引きになるなどの、独自のサポートシステムもある。漫画家の卵たちを安い家賃で入居させる事で、アルバイトの時間を減らし、彼らはその分の時間を、仲間たちと切磋琢磨しながら技術を磨いていく。この他にシングルマザーやLGBT(セクシャルマイノリティ)などの共通項を持った人々が集うシェアハウスもあり、互いに価値観を共有しながら、助け合い生活している。

 

photo 5 トキワ荘プロジェクト 写真元:トキワ荘プロジェクトhttps://tokiwa-so.net/

 当初、若者におけるシェアハウス住まいの大きなメリットは、コミュニティの形成だと思われた。彼らの世代では、インターネットやSNSの普及により、間接的に人と繋がるには充分過ぎる環境が整っているが、人と人との直接的なコミュニケーションに関してはむしろ縮小する一方だ。そのような環境にあって、彼らは希薄に感じる人との繋がりを補完するために、シェアハウスという手段で、共通項を持った仲間との触れ合いや、コミュニケーションを取っている。

しかし、一見SNSの対極と思われるシェアハウスだが、実はそれはSNSの強化版とも言えるのではないだろうか。

そこには孤高という言葉からは程遠くなった、人との繋がりの中でしか自己を肯定出来ない、存在意義を見出せない、という彼らが抱える弱さが見える。ネットの世界を飛び出し、直接コミュニケーションを始めたように見えるが、むしろ、より強い繋がりを求めるより脆弱な姿を感じる。それは自己承認力の弱さが「進行」した日本の若者のある種の病態でもある。つまり、シェアハウスはSNSのリアル版なのである。

このような背景が、日本のシェアハウスをUS等のシェアハウスとは全く異なる様相にしているのではないだろうか。

次回は、シェアハウスについて、不動産管理者の立場から分析してみたい。

参考サイト:オモシロメディアひつじ不動産https://www.hituji.jp/

ビジネスジャーナルhttps://biz-journal.jp/2014/06/post_5146.html

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