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2014年12月12日

【O2Oはもう古い? 8%でも楽しくランパス】

 2014年を振り返り、今年1年においての大きな社会的事象は消費税率の引き上げであろう。この結果、アベノミクス効果への期待が高まる一方で、以前にもまして財布の紐を強く締めるに至った消費者も増えたに違いない。

  そうした経済背景の後押しもあり、不況真っ只中の出版業界の風雲児として異例の売れ行きを見せているのが、「ランパス」ことランチパスポートである。

  私自身もその魅力にはまり、現在お昼休みにはランパス片手に新宿エリアを歩き回っている。

  このランパスの仕組みは至ってシンプルであり、書店やコンビ二等でランパス購入後、記載有効期限3ヶ月以内に掲載されている飲食店を訪問し、ランパスを提示するだけで特別ランチメニューをワンコインで頂くことができるというものである。二度美味しいとはまさにこのことであろう。

  とは言え、お得に食事が行えるというだけのサービスには物珍しさはない。このランパスの新しさは何より「書籍」であることに起因する。

  そもそもこのランパスは、高知県の地域タウン情報誌からの生まれであり、地元飲食店向けの有効的な集客効果を見込んで発刊された。それが地域活性化ビジネスとして注目が集まり、全国へ派生していくに至ったとされる。

  同様のオンラインサービスが広く出回っている中で、今回ランパスユーザーとして約半年間利用し続けて感じたその魅力と、オンラインサービスとは異なる新たな魅力について掘り下げていくとする。

 ランパスの魅力

                         1.「昼食代の省エネ効果」

                         2.「ネタの豊富さ」

                         3.「RPG感覚のゲーム性」

  まず第一の魅力は、いわずもがな「昼食代の省エネ効果」である。初期投資にパスポート代1,000(税込) がかかるが、掲載されているランチメニューのほぼ全てが通常(ランパス不使用時)700円以上の代物であるため、5回以上の使用で基は取れてしまう計算になる。

  2014年の社会人のランチ1回の平均予算は、「822円」だそうで、ランパスを使用しない月と使用した月(一月20日勤務で計算)とを比較すると、

        ・通常時:822円 ×20日 = 16,440円

        ・ランパス使用時:500円 × 20日 +1,000円(初月のみ) = 11,000円

 およそ1ヶ月で5,000円もの節約ができる計算となった。

【参考:マイナビニュース 「ワンコインよりちょっと贅沢? 社会人のランチ平均予算額は822円」】

 次に第二の魅力として、「ネタの豊富さ」いわば掲載飲食店の数の多さが挙げられる。エリアごとに差はあるが、私が使用している新宿エリアだけでも約100店の掲載となっており、メニュー飽きはほぼ皆無に等しい。一人暮らしの身としては、毎日異なるテイストを堪能できることは健康面も含め大変有り難い。

  最後に第三の魅力として挙げられるのが、「RPG感覚のゲーム性」である。目的の飲食店を目指し、ランパスのMAPを頼りに出歩くのが単純に楽しい。ランパスが無ければ訪れる機会がなかっただろう「穴場」を知るよいきっかけとなっている。また、目的の飲食店の発見だけでなく、知らないエリアに初めて訪れることで、ランパスとは関係ない興味深いお店の存在に気づくといった連鎖的な新たな発見も面白みの一つと言える。

  更にゲーム性の助長に寄与しているのが、有効期限が3ヶ月であることと訪問することで得られるスタンプのシステムである。これがコレクター魂に火をつけるきっかけとなり、「限られた時間の中でどこまで頑張れるのか」、自身のランパスに一つずつ達成の証が増えていくことに満足感が生まれている。

 このように利用者側の有用性は見られるが、同様の仕組みづくりであればスマートフォンアプリでも十分対応できるはずである。

 しかしながら、この仕組みがアナログ体質であることの必然性は大いに感じられた。そこにはデジタルからでは得られないアナログ感ならではの感動が存在する。

 第一に冊子そのもののクオリティの高さは圧巻である。見ても触っても感じられる上質さは、昔ながらの雑誌作りのノウハウが生かされた、まさに「プロの一冊」といえよう。

 次いでデジタルとアナログでは、頭に入ってくる情報量に明らかな差異が感じられる。インターネット上では必要な情報を自ら探しにいくため、必要最低限の収集で完結するケースが多いが、雑誌を読んでいるときの予想だにしない情報量の多さから得られる驚き感の数々はアナログならではの報酬である。

 また、得られる情報に対する魅力はデジタルの画面越しでは伝わりにくい。よりリアルに近い感じだからだろうか、パスポートからは美味しさがより伝わってくる気がする。

 更に、達成感の度合いも異なり、利用するたびにぼろぼろになっていく一冊に対し、愛着や思い入れが強まっていくのもアナログならではの産物である。

  過去にはランパスと同様、消費者にお得感を打ち出し、集客量の増加をうたったオンラインサービスにはグルーポンやポンパレなどのクーポン共同購入サイトが記憶に新しい。

 これらはサービス開始当初、O2O ( Online to Offline) の実店舗への集客対策例として大きな注目を集めたが、1年も経たぬうちに同類の多くのサイトは閉鎖の道をたどることとなった。

 ランパスのもう一つの大きな魅力は飲食店側にとっても掲載するメリットが見られることである。

 掲載飲食店側のメリット

                           1.「広告費の節約」

                           2.「営業時間の有効活用」

  一つ目のメリットは、「広告費の節約」効果である。飲食店側はランパスへの掲載料を一切支払う必要がないため、無料で店の認知度を効果的に高めることが出来る。

  二つ目のメリットは、「営業時間の有効活用」である。ランパスは飲食店ごとに利用可能日、利用時間を自由に設定できるため、掲載されている多くの店舗が比較的集客が見込みやすい土日祝日を除いた平日のお昼時間のみの利用に制限している。通常では来店者数があまり期待できない時間に集客の的を絞ることで、効率のよい営業を行うことが出来る。

 一方、クーポン共同購入サイトが撤退に追いやられた理由として、

            ①マージンの高さによる掲載店舗の協力率の低下

            ②予約制による不利便性の顧客離れ

が考えられる。

  ①に関して、店舗側の掲載料が無料という点ではランパスと同じだが、クーポン特別価格(店によっては50%以上もディスカウントしている場合もある)で提供されるサービスは、売上金額の5-10% のマージンをサイト運営企業に支払う必要があるため、最終的な利益は相当少なくなる。広告としての価値しかほぼほぼ見込めないため、徐々に掲載協力店舗が少なくなり、クーポン利用者側も目新しさが薄まり離れていったといえる。

  ②に関しては、利用者側はクーポンを利用する際に予約が必要となる。店舗側は利用可能期間、利用可能日(中には一日○組のみと制限している場合もある)を設定しているため、購入者数が多ければ多いほど、利用者側は希望日時の使用を果たせにくくなり、魅力は大きく落ちる。一方、店舗側も利用規定を無制限にしてしまうと、クーポン利用者のみの来店が目立つようになり収益が見込みにくくなる。そのため、厳格な制限を設けざるをえなくなり、結果として利用者離れが広がっていたもの見られる。

  このようにクーポン共同購入サイトと比べてランパスには、利用者側にとっても掲載店舗側にとっても、さらに出版側にとってもwin-win-win の関係がきれいに成り立つ仕組みが構築されており、利用エリア、掲載店舗数も順調に拡大しているようだ。

 営利目的を主眼としなかった地方情報誌からの発信ならではのエコシステムである。

 近年スマートフォンアプリを利用した集客サービスに焦点が置かれているが、多くの消費者は小手先の煩わしさにやきもきしているように感じられる。

  総じてランパスが多くの消費者から受け入れられた最大の理由は、下手な手続き等が一切不要の「分かりやすさ」「お手軽さ」に他ならないだろう。

  ポイント還元サービスとは異なる、購入と同時に即座に利用できる「目に見えるお得感」がオンライン消費時代の中でオフライン to オフラインを成功に導いたヒットの秘訣ではないだろうか。

  2014年はオンラインが消費者ライフスタイルに広く根付いた年ではあるが、ひょっとしたら「オフラインの逆襲の始まりが垣間見えた年」であったと、後に言われるかもしれない。

ランパス2

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