最近、こんなキャッチフレーズを見聞きした人は多いのではないだろうか。
これは、YouTubeのCMや広告のキャッチフレーズである。
2014年は、実際にYouTubeに動画を投稿している、人気の動画投稿者をCMや広告に起用したことで、『YouTuber』という存在が広く認知された年ではないだろうか。
YouTubeの統計情報によれば、チャンネル登録は毎日、何百万件も行われ、チャンネル登録を行っているユーザー数は昨年と比べて 3 倍以上となっている。また、1 日のチャンネル登録件数は昨年と比べて 4 倍以上となっている。
◆『YouTuber』とは
主に動画共有サイトのYouTube上で独自に作成した動画を継続して公開している人物や集団を指す名称である。
狭義では「YouTubeの動画再生によって得られる広告収入を主な収入源として生活する」人物を指す。
なお『YouTuber』『YouTubeクリエイター』という呼び名が使われるのは日本語圏のみで、英語圏では『YouTube personality』『YouTube Star』『YouTube Celebrity』などの表記が使われることが多い。
※wikipediaより一部抜粋:https://ja.wikipedia.org/wiki/YouTuber
◆日本で広告収入を得ている『YouTuber』達
公式な年収の計算方法は不明のため、推測になるが、動画再生数の10分の1の数字が広告収入としてパートナー(投稿者)に入ってくると言われている。それをもとに、アフィリエイト総合情報ブログ-アフィリーランドが、年収を計算したランキングがあったので、参考までに記載しておく。
※平均再生回数及び登録者数はYovios調べ:下記の計算式に用いられた動画再生数とは異なる。
※アフィリーランド:https://netbusinessland.com/youtube-ranking-japan-678
※Yovios:https://yovios.com/youtube-all-avg-ranking-ja
◆動画広告の種類
YouTubeで、広告収入を得るには、大きく分けて以下の3つの方法がある。
・(True View)インストリーム広告
・ インサーチ広告
・インディスプレイ広告
「インサーチ広告」、「インディスプレイ広告」の場合は、視聴者が検索したワードや視聴している動画に関連したものに合わせて表示されるので、視聴者を誘致しやすいというメリットがある。また、視聴者がクリックした地点で換金されるので、「インストリーム広告」に比べると、収入を得やすいように思われる。
しかし、大抵のパートナー(投稿者)は、途中でスキップできるタイプの「インストリーム広告」=「True View インストリーム広告」を利用しているようだ。(スキップ不可の「インストリーム広告」もある)
「True Viewインストリーム広告」は、投稿者がアップロードした動画の冒頭、途中、最後のいずれかに広告が表示され、5秒間は強制的に広告が表示される。その後は、視聴者が広告をスキップするか、そのまま視聴するかを、選択できる。広告収入を得るためには、視聴者が、30秒以上視聴しなければならない。(30秒未満の広告の場合は、最後まで視聴した場合に課金される)
一件、このようなしくみの場合、視聴者のほとんどが、広告をスキップしていまい、収入には至らない様に思える。
ところが、視聴者の再生履歴や年齢、性別、地域を元に、その視聴者にとって関連性の高い広告を表示しているため、広告をスキップせずに最後まで見る人は15~45%に上るという。
また、スキップ不可の「インストリーム広告」の場合、視聴者が嫌がり、見ようとした動画自体を放棄してしまう可能性が高い。YouTubeで高額の広告収入を得るためには、ある程度、ファンがつかなければ、大きな収入に繋げることは難しい。
そのため、まずは、ファン獲得のため、敬遠されがちな、スキップ不可の「インストリーム広告」の使用は避け、「True Viewインストリーム広告」を使用するのがセオリーのようだ。
Youtube上で広告収入を得る人が増えてきた背景としては、以下のことが考えられる。
1、「YouTubeパートナープログラム」の緩和
実は、YouTubeに広告を載せて収入を得るしくみは、2008年頃から行われていた。
しかし、開始当初は、誰でもできるというわけではなかった。審査制だったため、許可の下りたパートナー(投稿者)でなければYouTube上で広告収入を得ることが出来なかったのである。
ところが、2012年4月に日本を含む20カ国で、YouTube上の広告から一定の割合を収入として得ることができる「YouTubeパートナープログラム」の資格用件を改定し、YouTubeに動画をアップロードしている人ならば、誰でもプログラムに参加できるようになった。この頃からYouTube上で広告収入を得ている『YouTuber』 と呼ばれる人物が飛躍的に増えていったようだ。
2、支援・サポートの充実
東京・六本木ヒルズに、映像クリエイターの映像制作を支援するYouTube Space Tokyoがある。
YouTube Space Tokyoとは、動画を作るアイデアはあるけれど、機材が足りない、スキルがないという悩みを持っているユーザー(投稿者)の悩みを解決するための場所である。利用するには、YouTubeパートナープログラムに参加し、YouTubeのチャンネル登録者数が100人以上いることが条件だ。
申し込みをすると、編集ソフトFinal CutなどがインストールされたMacProや編集設備が利用可能だ。
クリエイターは活躍に応じて、スタジオや機材を無料で利用できる機会も与えられる。チャンネル登録が8000人以上になると、セットや衣装、メイク、スタッフなど、よりハイレベルなサポートが受けられるチャンスもある。
YouTube Space Tokyoでは、ワークショップやトレーニングプログラムが週に2~3回開かれており、クリエイター同士が集い、お互いのスキルを提供しあっているという。
YouTube Space:https://www.youtube.com/yt/space/ja/tokyo.html
Tokyo PAGEより一部抜粋:https://thepage.jp/detail/20140617-00000015-wordleaf?page=2
また、2014年から、YouTube がクリエーター(投稿者)を支援できる “投げ銭”的な機能の「視聴者ファンディング」を開始した。
現在は、日本を含む4カ国のみとなっている。
投稿者がファンディング機能を有効にしている動画には、隅にハートマークのアイコンが表示される。投稿者に寄付したい視聴者はアイコンをクリックし、任意の金額を支払える。支払いはGoogleウォレットを使用するので登録が必要だ。
支払額の中にはYouTubeへの手数料も含まれている。日本の場合は1回の寄付につき、支払額の5%+22円をYouTubeが徴収する。例えば、100円寄付した場合、27円の手数料がかかり、投稿者が受け取るのは73円となる仕組みだ。
次に、パートナー(投稿者)を発掘・支援する企業も存在する。有名な企業では、UUUM株式会社だ。
UUUM株式会社は、2013年に設立をし、HIKAKIN氏、佐々木あさひ氏、はじめしゃちょー氏、瀬戸弘司氏など、名だたる人気『You Tuber』が所属している。UUUM株式会社は、『YouTuber』のマネジメント業務を担っており、様々な企業とのタイアップ、媒体への出演、グッズ制作、動画制作をサポートする『YouTuber』専用の芸能プロダクションだ。
個人が動画制作、投稿を継続的に、より良いコンテンツを投稿できるような環境やサービスを提供し、オンライン上で活躍の場を求めるクリエイター、タレントを積極的に支援している。
場合によっては、風邪をひいた『You Tuber』に風邪薬を届けるということまでしてくれるという。
◆今後のYouTuber達の立ち位置
YouTubeといえば、UGC(User-Generated Contents) 動画のイメージが強いのではないだろうか。
しかし、近年、YouTubeは、テレビ局、芸能プロ、映像・ソフト会社などの、プロが製作した動画コンテンツの拡充に、投資をはじめている。これは、テレビ局や制作プロダクションにYouTubeが制作資金を提供し、YouTubeでしか見れないオリジナルコンテンツを作るというものだ。
それとは逆に、『YouTuber』が、メディアに進出をしているケースもある。
恐らく、日本で一番広告収入を得ているTOP『YouTuber』のHIKAKIN氏がそうである。HIKAKIN氏は、2013年に雨上がり決死隊の宮迫等とスカルプDのCMに出演している。HIKAKIN氏が自身の動画でスカルプDの紹介をしたところ、それを見た企業側からオファーが来たことがきっかけだ。もともとHIKAKIN氏はヒューマンビートボクサーとしてパフォーマンス動画を中心にアップロードしており、そのパフォーマンスを活かして、ミュージックステーションやSMAP×SMAPなど、国内に止まらず、エアロスミスやアリアナ・グランデとも共演を果たしている。
このように、YouTubeからメディアへ、メディアからYouTubeへ進出するケースは今後、益々増えていくことが予想される。
いつしか、両者が入り乱れ、やがて淘汰されたとき、芸能人と『YouTuber』の境界線はひどく曖昧なものになるように思える。
しかし、その曖昧さの中にも、芸能人と『YouTuber』とでは、モチベーションの違いがあるように思える。
例えば、2014年7月1日から、歌手のGAKTが、ネスレプレゼンツの「GACKTなゲーム!?ガメ先手ル!」で1年間365日、毎日19:00よりゲーム実況の動画配信を行っている。しかし、これは、あくまでもビジネスの延長戦であり、自己あるいは、提供している企業のアピールが目的である。決して『YouTuber』として有名になりたいわけではないだろう。
次に、『YouTuber』の場合、こちらは区分けが難しいが、なんとなく、本音がうかがえるコメントがあったので、見て欲しい。
朝日新聞DIGITAL、情報サイトnanapiのインタビューでTOP『YouTuber』のHIKAKIN氏はそれぞれ、以下のように答えている。
・ 「(テレビにも6回出たが、)細かく指示され、やらされている感があった。ユーチューブなら自分のペースで番組ができる」
朝日新聞DIGITAL:https://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201207030213.html
・「TV番組に比べて、短時間・低予算で作ったものでも世界中の多くの人を楽しませられる可能性を秘めている…というのがYouTuberの魅力だと思います。ボク自身、自分1人で好きなように作るのが好きなんです。自分の部屋の隅っこで撮ったものが世界中に、それも何百万人に見られる…そんな現象に今も憧れています。」
情報サイトnanapi:https://nanapi.jp/116989/
このコメントからは、暗に、テレビでは自分のやりたいことが表現できない、YouTubeだからこそ、テレビなどのメディアよりも、表現できる楽しさがあると訴えかけているように思える。
つまり、このことから、『YouTuber』は、自身の動画へのアクセス数UPのためにメディアに進出し、タレントは、自身の地名・話題性のためにYouTubeに露出しているといえる。