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2014年04月04日

誰もが1日2回通る場所 -駅ナカ-

「駅ナカ」とは駅構内、改札を出る前のスペースのことであり、近年、開発が盛んに行われている。東京駅、大宮駅、品川駅などが東京近郊では有名である。

先日、平日の6時ごろ、品川駅のエキュートに立ち寄る機会があった。立ち寄ってみて驚いたことが幾つかある。それは、人の多さと購買意欲の旺盛さ、活気の良さである。これは「駅ナカ」という立地ならではの何かがあるのではないかと思い、今回幾つかの駅ナカを回って検討してみようと思う。

今回比較するのは、東京駅、上野駅、品川駅の3つの駅である。実際に回ったのは4月2日(水)昼間の時間帯である。

■上野駅:各出口や路線に合わせたお店の配置

上野駅案内図

上野駅は2階構造になっており、1階は中央改札口、新幹線乗換え口などがあり、2階には公園口、入谷口がある。駅ナカは2階の公園口・入谷口の間にある。1階は駅構内にはお店らしいお店はなく、その代わり中央口を出るとすぐに駅直結の商業施設(アトレ)というような構造になっている。

実際に上野駅に行ってみて感じた特徴は、各出口や路線に合わせたお店の配置やMDがなされているという点である。3年前、公園口がリニューアルされ現在の形になっており、公園口すぐのところに雑貨屋や軽い女性物のアパレルショップが入っている。(下写真)

中川のお店

                         公園口すぐの雑貨屋

 中川政七商店は奈良県で300年続く晒メーカーのお店であり、自社商品に加えて全国の伝統工芸品などをセレクトして売っている。もう一店はrezept design&storeはデザイン雑貨のお店であり、アート性の高い雑貨を扱っている。この2つの雑貨屋の特徴として挙げられるのは、デザイン性のあるものやこだわりのあるものがセレクトされているお店だということだ。これは、公園口を出ると美術館や博物館が続くこの場所らしいお店の配置ではなかろうか。また、それだけに的確に集客ができている様に感じた。

写真③ ストール全品20%オフ

 また、公園口近くのレディースアパレルショップもなるほどと思わせることをしていた。(右写真)その日の天気・気温をボードに書き出し、その上でストールを20%OFFという表示。折りしも満開の桜、上野公園へのお花見客は多い。暖かくなってきたといは言え、巻物やはおりものは必要である。お花見で意外と寒かった、もう一枚持って出てくれば良かった、という経験をした事のある女性は多いはず。そんな中でこれは最高のマーケティングではないだろうか。欲しい、と実感したその時にお店があり、一押しの文句があるのである。

写真④ 緑の窓口

もう一つ、上野駅の特徴と思わせたのは、在来線特急乗り場前のバーである。常磐線の特急乗り場、宇都宮線・高崎線乗り場前にいかにもサラリーマン(ウーマン)向けの場所があるのである。この3つの線は北関東へ向けた中距離路線ということもあり、ここから比較的長い時間電車に乗ることが予想される。また、そのため、仲間とガヤガヤ飲む、というよりは1人で電車までのちょっとの時間を有意義に過ごす、ということが安易に予想できる。そうした意味で、この配置は上手いな、と思わせるものであった。

■東京駅:新幹線・長距離移動者をターゲット、行くことが目的になる駅ナカ

 東京駅は2007年の「グランスタ」(地下1階)のオープンを皮切りに大規模にその広い構内に商業施設を展開している。構内の構成は、1階は新幹線乗換え口を中心にしてノースコート・サウスコート・キッチンストリートを展開。また、京葉線への連絡通路にはケイヨウストリートがある。地下は全体がグランスタとなっており、コインロッカーや100席以上あるカフェなどもあり、比較的ゆっくりすごす空間設計がなされている。

写真5 案内図

 東京駅の特徴としては、新幹線・長距離移動者に的を絞った作りになっていることである。それは上記の駅構内図を見ても明らかである。多くの商業施設が新幹線乗り場に隣接しており、在来線の乗り場近くには従来のコンビニや土産物屋しかない。JR東日本の調査によると、東京駅を利用する長距離移動者は平均27分前に東京駅に到着しており、駅構内の施設を使いながら出発までの時間をすごしているという。

(拠点駅における将来の駅機能のあり方に関する調査研究:https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_16/Tech-16-27-34.pdf

 店舗の特徴としては、「東京駅限定」や「初出店」などが多く、そして東京駅ならではの特別感、旅の気分をさらに盛り上げるものなど、「特別感」が演出されていた。また、価格としては割高なものが多かった。それはやはり、長距離移動者=旅行者の心理と「特別感」により高くても売れる、ということのように思えた。

写真 ⑥ デパ地下の様子

写真7 book express

 東京駅の中で、立ち位置の違うのがケイヨウストリートである。ケイヨウストリートはその名の通り、京葉線に向かう通路の途中にあり、ここのコーナーは他の駅と同じようにターゲットは普段から東京駅を使う人である。

 書店や雑貨屋、総菜屋さんからなり、品揃えも普段の生活よりのものである。

 これは千葉方面からの通勤・通学者向けのゾーンであると言える。

■品川駅:周辺オフィスの大人(20代~40代)を意識したつくり

 品川駅は2005年に駅ナカが誕生しており、構造は改札を入って左手奥に区画(仕切りの壁)を作って2階フロアまでのゆったりとした空間構造になっている。吹き抜けがあり、自然光が差し込んでくるのも特徴的である。

写真⑧ 品川駅の様子

吹き抜けがあり、ゆったりした明るいつくり

 品川駅で特徴的だったのは2階フロアである。もともと、今回の取材のきっかけにもなった場所である。1階フロアが食品であるのに対して、2階フロアは雑貨や本、洋服や化粧品、カフェなどでまとめられており、吹き抜けを囲む形のフロアの構成もあり、駅構内という印象がなく、広々と買い物を楽しめる空間となっている。

写真⑨ フルーツギャザリング

 この2階フロアの中でも特に印象に残ったのが、阪急フルーツギャザリングである。このお店は百貨店の阪急が出しているセミセルフ方式の化粧品・雑貨店である。(セミセルフ式の化粧品店については以前の記事を参照していただきたい)こちらのお店の平日の夕方に驚いた。次々とお客が入って来て、商品を購入していくのである。

 このお店の上手いな、と思わせた点はこの売り場構成と商品のラインナップである。売り場構成としては登りエスカレーターのすぐ前に雑貨を配置することで入店を促し(化粧品よりはハードルが下がり、入りやすくなる)、そこから化粧品の方に流す工夫がされている。そして、プチギフト等、この歓送迎会時期の会社勤めの女子にとってニーズのあるものや日常的に必要な雑貨(ヘアアクセサリーやタイツ等々)などを取り揃えている。化粧品においては百貨店コスメが取り揃えてあり、付近にめぼしい百貨店のない品川においては重宝する存在である。こうした点と、駅構内、必ず毎日通る場所という利便性からお客を集めているものと思われる。

 また、全体的な印象として、20~40代向け、少しゆっくりと買い物をする、というようなコンセプトのように感じられた。1階の食品売り場では試食なども行っていたのも百貨店のようで印象的であった。

OLIVO写真10 

 2階においても、本屋が他の駅の本屋が文庫本などを前面にしたディスプレイに対して、趣味や生活、アートの本などを前面にしてあった。D-BROSというデザイン雑貨店ではその場で買ったものに300種類以上ある用意されたスタンプから好きなものを押して自分だけの雑貨を作ることができる。こういったことからも、駅構内というのを忘れさせるようなつくりであった。

D-BROS写真⑪ 

D-BROSでは好きなスタンプが押せる

今回、3つの駅ナカを回ってみて気がついたのは、どの駅も利用客の属性にあった構成・お店作りをきちんとしているという点である。駅は、集客という点では困ることはない。行きと帰り、必ず2回通るお客の属性をどう掴みどう生かしていくのか、というのがまずは重要な点なのである。

 また、駅という限定された空間はそれだけで消費を促進させる作用もあると思われる。長距離移動者なら駅に着いた時点ですでに旅のモードに入っているので財布の紐はゆるくなっている。おでかけ、というイベントの最中には財布の紐は緩む。会社、というストレスにさらされた後、疲れた状態は購買意欲が高まっている時でもある。こうしたチャンスが駅には必ずある。

 これからも駅ナカの進化は続いていくだろう。そうした中でどのような消費の機会、仕掛けが新しく出てくるのか、これからが楽しみでもある。

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