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【朝活はライフスタイルの改革者】
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【朝活はライフスタイルの改革者】

2014/06/20
REPORT

今から約10年前、私が社会人になりたての2004年頃、「アフター5」というライフスタイルに憧れる同級生が多かったことを覚えている。しかし、いまやそのようなライフスタイルに憧れる人は見かけなくなり、時代は「朝活」へとスイッチされた。「朝活」というライフスタイルは、流行し始めてから既に何年も経っており、もはや珍しい活動ではないが、実際に朝活を経験したことがあるビジネスパーソンはまだ一部のようである。

私は、実際に、この4月から約2ヵ月半、毎週火曜日の朝7時15分から、丸の内朝大学という市民講座に通い、「朝活」を体験してきたので、その実態について紹介させて頂きたい。

丸の内朝大学とは、その名の通り丸の内エリアにあるカフェや会議室で、様々な講座が開講されており、オフィス街の中心という土地柄、授業の開始時間は午前7時15分である。このスタイルからも推測できるように、対象は、出勤前のビジネスパーソンである。年代は30代が半数を占めているが、20代後半から上は50代までと年齢層は幅広く、男女比はおよそ4:6の割合で、若干女性のほうが多い。

開講講座は、従来の大学と同様にいくつかの「学部」から選択することができ、「マネー講座」、「ZEN呼吸法」、「天体観測」、「阿波踊り探究クラス」「Culture Discovering(英語)」など、硬軟とりまぜたユニークなテーマが並ぶ。

Photo 1 よが

「ヨガforビジネスパーソンクラス」 「ソーシャルクリエイティブクラス」

Photo 2 阿波踊り

「阿波踊り探究クラス」  「地域復興農業プロデューサークラス」

私が受講したのは「Culture Discovering」といって、地域・地方の活性化・街づくりについて学習するコースである。週1回の授業は講義形式であるが、グループでディスカッションや簡単な発表をすることもある。また、ある週末を使って、フィールドワークとして現地に出向き、地域の街づくりに携わっている人や、地元の工芸品の販売者にお話を伺うというような内容もコースに含まれている。最終的なゴールとしては、その地域をプロデュースするためにはどのような取り組みを行うべきかを考え、グループでプレゼンを行った。

発表の1週間前から、チームのメンバーで7時に東京駅近辺のカフェに集合し1時間ディスカッションし、内容を詰めていった。まるで、早朝から仕事をしていると感じる時もあったが、仕事と異なり、実際に利益を出す必要はないので非現実な内容でも、自由にアイディアを出し合うことができた。早朝の時間帯は、会議も殆ど入ることがないのでメンバー全員が集まれるという利点もあった。

Photo 3 その他

この講座が終了し、非常に大きな達成感が得られたと同時に、日々の生活を充実させてくれる次のような事々を得ることができた。

・地域や街づくりに関する知識

・同じライフスタイル・志向を持った人との人脈

・1日が充実に過ごせる時間の使い方

・仕事へのモチベーション

・ライフスタイルの改革

・人生の生きがいを見つけるきっかけ

知識や人脈はこのような講座を受けると漏れなくついてくるものではあるが、私にとって最も大きかったのは、モチベーションの向上により、ライフスタイルの改革ができたことである。

それは、早起きが習慣化したことで1日を充実して過ごすことができるようになったことである。これまで、早起きはほとんどしてこなかったが、それは起きる理由がなかったからである。しかし、早起きする理由があると、前日の用事は早々と済ませて十分な睡眠時間をとるために早めに就寝し、朝の限られた時間を有効活用することができ、得した気分になれた。

また、朝から、ディスカッションをすることで脳が活性化されアドレナリンが一気に放出され、そのままモチベーションを保ったまま出社することができた。夜は、翌日が早いとわかっていると、限られた時間を有効に使おうという意識が働き、だらだらと時間を過ごすことが減る、というように、朝活はすべてを好転させてくれるきっかけを与えてくれた。

朝の活動が盛んになるのは、ビジネスパーソンにとって活動しやすい条件が揃っているからである。限られた時間の中で何ができるか、いかに時間を効率的に使うべきか、と自分にプレッシャーをかけやすい時間帯である。また、早朝には会議などの用事が入ることは少ないので、このような曜日固定の講座にも継続的に参加できる。(夜は、イレギュラーが発生することが多いので、継続的に通うことが難しい)

そもそも、朝活がブームになり始めたのは2000年頃だが、その頃は企業に成果主義が導入されて労働者個人の実力が重視され、それに伴いリストラの嵐が吹き荒れていた。年功序列や終身雇用が根付いていた頃は、個人の実力を誇示するよりも社内の人たちとの人間関係をよくすることが社会に生き残る要点とされていた。しかし、経済がグローバル化していく中で競争も激化し、企業自体が日本の従来の企業体質を見直すことになり、これまでのように「飲み会」や「無益な残業」に意味を見出す人は少なくなった。自分の実力は自分で磨く、ムダを拝して生産性をあげるといった自助努力に関心がシフトされるようになった。その一つとして、早起きをして体調を整え、有益な活動をすることが注目されるようになったのである。

そして、競争社会が当然となった今日では、仕事に追われるだけの人生ではなく、いかに人生を豊かにさせるかという考えを持つ人が増え、朝活は競争社会へのアンチのトレンドとなった。

このように、ビジネスパーソンの自分磨きの活動時間が、夜から朝にスイッチしている傾向があるが、総務省の「社会生活基本調査」によると、日本人の起床時間も早くなっている。平均起床時刻は2001年が6時42分だったが2006年には6時39分となり、2011年には6時37分になっている。日本人の“朝型化”が進んでいるのは明らかである。

また、朝活のコア年齢層である30代のビジネスパーソンの消費に対する考え方は、「人のつながりを大切にし、自分にとって必要なものを見極めた、無理・無駄のない暮らしを心がけている」である。特に、地域コミュニティ作りに関しては、何かと不安の多い世の中で暮らすためのセーフティネット作りとしても意識されているようである。

日本の経済成長力が後退していく中で育った30代は、今後右肩上がりの稼ぎは難しく、常に限界があるという考えがしみついている。よって、何を削るべきか、いかにお金を使うべきか、投資先を慎重に判断しなければいけない。その投資先として選ばれるのは、「いかに自分の暮らしを豊かにしてくれるモノコト」なのである。Source:新たなステージに突入するポストバブル世代(前)30代のライフスタイルから今後の消費ベクトルを読み解く

朝活は日々の仕事に追われてプライベートが充実できないと嘆いているビジネスパーソンたちの生活をものの見事に好転させてしまうという意味で、まさにライフスタイル改革者である。

美味しい食べ物を最後までとっておいて余計なものでお腹を膨らすより、初めに味わってしまおう。そうすることで、その後の食事がより充実し、結果として人生というジャーニーまでも充実できる。朝活は、ムダを減らそう・ムダにしないという考えが転じて、人生の生きがいを発見できる新たな価値なのである。

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