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2016年07月27日

《 CreatorによるMarket Creation 》 #003 淺井 カヨさん 後編

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淺井 カヨ  (日本モダンガール協會代表)

大正六十五年(昭和五十一年)名古屋生まれ。愛知県立芸術大学デザイン・工芸科 デザイン専攻卒業
平成十九年「日本モダンガール協會」を設立。日本の大正末期から昭和初期の「モダンガール」と、その時代についての調査、研究、催事、展示、執筆、講演会等を行うだけでなく、昭和初期の住居で暮らし、氷を入れる方式の冷蔵庫を実際に使用するなど、装いから暮らしまで生活の実践も行っている。

【 日本モダンガール協會 】https://mogakyokai.com/
【 モダンガール復興計画 】https://projectmoga.jugem.jp/
【 週刊モガ 】https://moderngirlkayo.blog.shinobi.jp/


インタビューの前半では、淺井さんが手掛けるモダンガールファッションの復刻を中心にお話を伺いました。後半では、彼女の情報発信と、これまでの活動をまとめた書籍についてお話を伺います。

インタビューの前半はこちら からご覧になれます。


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– – 淺井さんが2007年に立ち上げた「日本モダンガール協會」の活動規模や、活動内容について教えてください。

淺井さん(以下略称) : 会員数は現在200名程です。モダンガールに限らず、大正昭和の時代に興味を持っている者同士が集まって、情報交換することを主な目的としています。都内で年に2~3回ほど会場を借りて希望者が集い、各会員の発表を通じて様々な視点を共有しながら、当時の情報を交換します。一次資料から調べた本格的な時代研究もあれば、資料を使って独自に何かを復刻しましたという報告や、昭和初期に建てられた旅館に泊まって来ましたという体験談を発表して下さる方もいます。当時の雑誌の生原稿を発見して持ってきてくれたり、ご自分のお婆様の日記を活字に起こして毎回紹介してくれる方もいて、こういう会でないと触れる事ができない貴重な情報を皆さんと共有することはとても有意義ですね。当時に関する事は無限にあるので毎回が興味深いです。入会費などはありませんし、この時代に興味がある方ならどなたでも面白いと思える会だと思います。


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– – 実際に会場を借りて行う情報交換会以外にも、淺井さんはブログ「週刊モガ」「モダンガール復興計画」や、ツイッターを使って積極的にご自身の情報を発信しています。テレビも携帯も持たない浅井さんが、パソコンで情報発信するのは何故でしょうか?

淺井 : 一番には、誰にでも手軽に見られますので、発信する道具としてはとてもいいと思って始めました。自分が放送局を持って、自分のラジオをやっているのと同じです。私が発信塔になっても、多くの人にとっては「何これ?」で終わるのですが、それでも毎回、興味を持ってブログを読み続けている方もいて、有り難い限りです。宣伝としても活用できますね。ブログを見て展覧会に来られる方もいますし、ツイッターから取材の依頼などもいただきます。私は携帯電話を持たないので、パソコンでコミュニケーションを取ることで、ギリギリ現代に掴まっている格好なのかもしれません。


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– – ツイッターやブログでは告知などの他にも、淺井さんの日常や歴史資料などについて書かれていますが、初期の頃と比べて内容が徐々に変化しているように思います。淺井さんから情報を発信するにあたっての心境の変化などがあったのでしょうか?

淺井 : 初期のブログでは私自身の社会に対する意見や批判などを表すことが多くありましたが、それをやっても何も変わらないなと感じ始めました。また、ツイッターで貴重な資料を公開するよりも、ちょっとした日常の事を書いた方が多くの反応があるので、それについては少し複雑な想いもあります。ただ実際に私が発信したものを読んでくれている人がいるのだと実感として分かってきた事もあり、だったら面白いと思うものをどんどん紹介して、多くの人に興味を持ってもらう方がいいのではないかと思い、だんだんと考えが変わってきましたね。

私がメディアなどに出る場合でも、ちょっとズレてて変わっている人として取り上げられているのではないかと思います。それもある程度承知の上で、見た人が私を面白がって、当時に興味を持つきっかけになればいいと思います。もし私が清まして気取っていたら、興味をもたれないんじゃないかと思うので、興味を持つ方が増えるのは何よりです。


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– – 淺井さんの書かれたご本「モダンガールのスヽメ」は、全てが旧仮名遣いで書かれており、内容もユニークです。どのような狙いでこのようなご本を書かれたのでしょうか?

淺井 : 当時の暮らしを実際に自分がやってみて、今の時代にどうしたら再現できるかという事を書きました。それを一次資料と共に紹介していますので、歴史を取り上げた書籍としては、おそらく類性が無いと思います。モダンの時代に興味を持った方達に、ただインターネットで単語を調べるだけではなくて、一次資料や当時の道具を実際に触れたい!と思って欲しいんですね。でもいきなり古いものに当たるのはなかなかハードルが高いようにも思いますので、現代と当時の間のクッションに、私の本がなればいいと思っています。漢字や仮名遣いに昔のものを使ったのは、私自身があまりにも当時のものばかり読んでいて旧字の方が断然書きやすいというのもあるのですが、何よりも、読者が当時の資料に当たった際に違和感を覚えないように、慣れてもらう意図がありました。昔の言葉遣いに馴染む事で、より深く当時に興味を持っていただけるように思います。


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– – ご本の中で紹介されている道具の中には、当時まだ一般的でなかった高級電化製品の資料などもあります。モガのファッションに限らず、当時の文化を幅広く紹介したいというお気持ちが強いのでしょうか?

淺井 : 日本の、当時の勢いみたいなものが、一般にはあまり伝わっていないように思います。だからあえて、氷の冷蔵庫だけではなくて電気冷蔵庫や電気皿洗い機なども昭和初期に既に存在していたのですよと、本の中で紹介したかった。一般家庭向けのテレビジョンも、実用化はされていないけれど製品としてはできていました。日本の近代化に勢いがあってどんどん伸びていたという片鱗が、この本で分かるかもしれません。大正昭和の文化を取り上げると必ず出てくるのが、地方はどうか、農村の身売りはどうかと、当時の格差問題を言う方がおられますが、そこは、この本ではあえて触れていません。全てが豊かであったと言う気は毛頭ありませんが、あまり知られていない、このような側面があったのですよと例を上げながら、事実としてありのままに伝えたいという想いが、一番強いです。


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– – ご本の最後の段落で「敗戦前の日本」という言葉でモダンの時代を括っていますが、淺井さんはこれまで戦前文化を紹介しながら、あまり戦争については触れていないように思います。文化を紹介する際に、あえて「戦争」を避けているのでしょうか?

淺井 : 昭和初期の印象は、一般には戦争とセットになり過ぎていて、それによってその時代が全部ダメであったと一色単になっている場合があります。大正から昭和初期というのはたいして昔ではないです。モダンガールもまだ90年程しか経っていない。長い日本の歴史から見たらつい最近です。それが戦争を挟んだ事により全く遠くの世界になってしまって、以降の日本が大きく変わってしまいました。占領政策を経た後に、それまで連綿と続いてきたものが受け継がれていないんですね。
モダン文化があった後に戦争が起きて、そこで絶たれてしまった人生がいっぱいあるわけです。当時を知る世代がどんどんいなくなってしまう今の時代に、もう一回この時代に焦点を当て、見直す事は重要なのではないでしょうか。私はそこが、一番意義深い部分だと思っています。


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– – ご本の出版は数年前から淺井さんの目標だったそうですね。念願がかない出版が実現した今、新たな活動の目標などがあれば教えてください。

淺井 : この2月に音楽史研究家の郡修彦氏と結婚して、現在は新居を建てているところです。夫婦で昭和初期の洋館付き住宅を建てたいと考えて工務店を探し、すぐに出来るところが見つかるだろうと思っていたのですが、それは大きな間違いでした。いかに日本の住宅施工の環境が、昔のものを受け継いでいないかというのが改めてよくわかりましたね。住宅というのが、全く昔のものを選べる状況にないんです。特に東京でそれを出来る工務店がこんなにも少ないものかと驚きました。半年がかりで工務店を見つけ出し、ようやく着工して今秋には建ちますので、この経験で得た、現代における昭和建築の実践方法をまとめようと思っています。また何かの形で皆さんにお届けできればと思いますので、乞うご期待という事で。


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モガとその時代を実践しながら探究する淺井さんの活動は、「日本モダンガール協會」など限られたサークル内での研究発表に留まるのではなく、彼女にとって唯一現代的な家財道具であるパソコンを使い、モダン時代の魅力や、ご自身の活動内容を広く一般に向けて発信しています。メディアへの露出も含めた多くの人達とのコミュニケーションを経る事で、モダン時代の紹介者としてのスタンスを定め、伝えるメッセージの内容を精査して、活動の方向を明確にしているように感じられました。

著書「モダンガールのスヽメ」は、インターネットやテレビで彼女を知ったライトなファンに対しても、深くモダン時代の魅力を追体験できる実践方法を紹介していますが、それは同時に、淺井さんご自身が当時を実践しようとする中で明らかにしてきた、現代に受け継がれていない断絶した文化体験の紹介でもあります。戦争などによって途絶えてしまった体験を多くの人達に伝え、次の時代に残そうとする試みは、個人の趣味的な探求の範囲を超えた、社会や文化にとっても価値のある活動と言えるのではないでしょうか。決して多くの人々が関心を持つ分野ではない、個人の「好きな事」から始まった私的な探求と実践が、社会とのコミュニケーションの中で意義や役割を見出し、建築など新たな探求の方向を見据えている点を、興味深く感じました。(渡邊)


インタビュー / 構成 : 渡邊 陽平

㈱スガタリサーチでマーケティングの業務に携わりながら、ファインアートの市場で絵描きとしても活動中

写真撮影 : 磯崎 威志 (Focus & Graph Studio

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