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2016年01月08日

《 CreatorによるMarket Creation 》 #002 加藤 千晶さん 後編

加藤千晶後編

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服飾衣裳作家 加藤 千晶  (CHIAKI-a.ladonna.JAPAN)

コレクションブランド等のアパレルデザイナーとして約10年の経験を積み、2007年フリーランスになる。2009年、デザインオフィス「a.ladonna」設立。人と日本製にこだわりながら、服だけに捉われない様々なジャンルとのコラボレーションにより、作品やイベントを創り出している。新作をトランクに詰めて国内外を巡り、展示会を開催中。アーティストのステージ衣裳やウェディングドレスのオーダーメイド、衣裳のアレンジ・リメイク等も多数手掛けている。1978年 三重県四日市市出身。

【 webサイト 】https://a-ladonna.com/ja/
【 オンラインショップ 】https://aladonna.fashionstore.jp/


インタビューの前半では、加藤さんのブランド「Chiaki-a.ladonna.JAPAN」から発表されている服のシリーズ「綴(つづり)」の、制作を中心にお話を伺いました。後半では、作品の販売方法や今後の活動展開についてお話を伺います。

インタビューの前半はこちら からご覧になれます。


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– – 加藤さんのブランドでは、「綴」をはじめとする商品を店舗やバイヤーに卸すのではなく、全てご自身で各地に出向いて直接展示・販売するスタイルが特徴的です。このようなやり方を始めたきっかけは何でしょうか?

加藤さん(以下略称) : 企業に勤めていた時は、販売店や営業、MDからの意見や提案は来るけど、デザイナーが直接お客さんと交流して意見を聞く機会は全くありませんでした。でも自分の服にどんな人がどういう想いを抱くのかって知ることは、作り手にとって必要なものだと思っていたから、ブランドを始めた初期から、自分で場所を選んで展示して、地方から海外まで、お客さんと直に交流しながら販売するスタイルを続けています。実際このやり方はお客さんの正直な反応が分かるから、作品に対する新たな発見や、フィードバックが大きいと思っています。

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– – 「綴」を購入されるのは、どのようなお客様が多いですか?

加藤 : 年齢層は20代から50代くらいまで、男性も女性も同じくらいです。いろんなお客さんがいるけど、やっぱりミュージシャンとかアーティスト、クリエイターのお客さんは多いですね。自由にいろんな着方のできる服って他にないし面白いねって、喜んで買っていただいて、ステージ衣装で着られる方もいますし、また普通のOLさんでも、普段着以外にパーティー衣装でコーディネートされる場合もあるみたいです。
私からもお客さんに着方を提案させていただくけど、試着をしながら服とのコミュニケーションを楽しんでいただく中で、お客さんに思ってもみない着方をされて新しいアイデアが生まれることもあるし、お客さんの方も自分がこれまで着た事の無い服にいろいろな発見をしてくれて、この服だったらこういう着方もできるねって、新しいコーディネートやオケージョンを提案してくれたりする。そういう交流がとても楽しいし、有意義で貴重なものだと思っています。

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– – 個性的な服に対して苦手意識を持つお客さんに「綴」を着ていただくのはハードルが高いようにも感じます。積極的でないお客さんに対しては、販売の現場でどのようにアプローチしますか?

加藤 : 以前紹介していただいた男性のお客さんで、作品を見た途端に「自分には無理です、着れないです!」って拒否反応を示す方がいました。確かにそういう方が居るのも承知しています。無理強いはしないけど、でもきちんと服のコンセプトや考えを説明させていただく機会がある場合は、一度袖を通すだけでも着てみて下さいってお勧めします。その男性にも着ていただくことができたので、気に入ってもらえて、とても喜んでいただき、「綴」のファンになってもらえました。実際に身に纏って、自分でスタイリングを調整しながら着心地を体感して、着る事でしか伝わらない服の良さは確実に在ると思うんです。服だけ見てたら伝わらない。袖を通すことで外見が変わるだけじゃなくて、気持ちも変わるんだと思う。そういう服の体験を伝えたいし、できれば服の背景や、作り手の想いや理念も届いてほしいと思っています。そのためにも直接販売は有効だし、成果を上げていると感じています。

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– – 商品の価格を設定する際は、どのような要素を考慮しましたか?

加藤 : 通常のアパレルが原価率25%くらいなのに対して、「綴」では35~40%の原価率です。店舗を持たないし、広告宣伝費もかけてないですから。日本製の品質にこだわって経費とかも考慮すると、これくらいがバランスとれて継続可能な現実的ラインだとも思います。以前商社で企画生産チームに関わっていたときに、大手から中小まで、いろんなブランドの原価率とか掛け率とか、比重の置き方を勉強させてもらい、通常のアパレル会社の営業さんより情報を得ることが出来たと思うので、そういう要素は考慮しますね。ただ収益を考えるとき、企業みたいに半期や一年で結果を出して回収するんじゃなくて、複数の企画を並行しながら先行投資の期間も含めて、一つのプロジェクトが3年くらいの計画で、ゆっくりと育って回収できるような体制で考えています。

– – 店舗を持たないとはいえ、各地に遠征する際にも費用がかかります。特に海外への出張費は馬鹿にならないと思うのですが?

加藤 : 地方や海外に行くのは、ただ単に商品を売りに行くわけじゃないんです。来月はトルコ、イタリア、スペインの3か国に行きますが、これは現地のダンサーやクリエイターとの顔合わせや、打ち合わせも兼ねています。またそこで別のアーティスト達を紹介してもらって、新たな交流も生まれる予定です。あとは問屋街で仕入れもするし、観光してお酒も飲む!これだけ内容を詰め込んでも、恵比寿で店舗を借りる家賃の1/4程度だから。そう考えたらリーズナブルだし、何より価値ある投資だと思います。

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– – 最近は直接販売だけではなく、ご自身のオンラインショップを開設されましたね。直接の販売にこだわってきた加藤さんには意外な展開のようにも思えます。

加藤 : 各地でいろいろな方に購入していただく際に、スマホで試着の写真を撮らせてもらって、Instagramやホームページで公開しています。正直インターネットは得意じゃないんだけど、そんな事も言ってられない時代ですからね。掲載許可をもらえたものに限るけど、こういったスナップ写真が私の宣伝広告にもなってます。特にここ最近は、Instagramを見た方から「どこで購入できますか?」というお問合せをいただく機会が増えたこともあり、オンラインショップを始めることにしたんです。Web上でいろんな国や体型の人の着用写真を見てもらって、この人の着方が面白いとか、こんな着方もできるんだって、たくさんのユーザーさんの個性をシェアしながら興味を持ってもらうのも理想的なブランドの広がり方だと思うんです。着実な人との交流の中で生まれた着用のバリエーションやユーザーの個性が、服のリアルな価値だと思うし、ブランドの基盤になっているとも思うので、そういうWebのイメージから新しいユーザーさんが入ってきてくれて、これまでに無い、新しい着方を新たに付け加えてもらえたら嬉しいです。

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– – 今後、さらにブランドを広げていくために取り組んでいきたい事はありますか?

加藤 : ユーザーとの新しいチャンネルとして、ファッションショーや異業種とのコラボイベントを予定しています。ショーでは一般の方にモデルをお願いして、年を取った人や若い人、人種の違う人、もっといろいろな人にモデルで着てもらいたいですね。ブランドを知らない人でも、自分と同じ年代や背格好の人が着こなしているのを観たら、個性的な服にも親近感を持って入って来やすいと思うんです。私の提案したい「かっこよさ」は、モデルみたいに理想的で整った美しさよりも、個人が持っている渋さやチャーミングさみたいな、その人の個人的な魅力だから、既存のお客さんを大切にしながら、さらに幅広く興味を持ってもらえるようなショーを企画していければと思っています。

起業する以前の私は「かっこよさ」を、コルセットみたいなイメージで捉えていました。無理してピンヒール履いて、強く体を締め付けて矯正された「かっこよさ」です。お客さんに対しても「かっこよさは簡単に手に入ると思わないで!」っていう意識を何処かで持っていたし、自分に対しても、もっと「こうしなきゃいけない」って締め付けをモチベーションに服をつくっていたような所がありました。自分のブランドをもってからは、そういう直接的な締め付けは感じなくなりましたね。「こうしなきゃいけない」や「こうあるべき」っていう服の締め付けや既存のスタイルを取り払った状態で、個人の「かっこよさ」を主張するのが「綴」のテーマです。ユーザーさんにも、誰かに与えられたスタイルや造られた流行に縛られない、自分らしく自由な服の楽しさを届けられればいいと思っています。私の服に触れて体感することが、その人の個性を発揮するための力になって欲しいし、新しい自分らしさを見つけるきっかけになればいいって、願っています。

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様々な服の活動を並行して行う加藤さんのブランドは、着る人の個性や創造性を強く意識している点で一貫しているように思います。作家がパタンナーを兼務して全てを一人で作り上げる「綴」は、ユーザーの個性が入る「空間」を服の形と直結させた独特の制作工程によって生み出されます。そしてそれは、作り手が抱く服の概念を制作手法と直結させて作り上げたオリジナルなスタイルであり、既製服とは全く別の、ユニークで創造性に富んだ作品であるように感じました。

流行や画一的な美しさではない、ユーザー一人一人が個性と向き合える事を目指した作品は、新たに展開される「バリアフリー」のプロジェクトや、webを通した販売、ファッションショーを通じた一般ユーザーへの働きかけなど、多様な人々に向けて発信され続けています。さらに多くの個性と向き合いながらその交流の中で変化を続け、新しい服とブランドの形を生み出し刷新し続ける加藤さんの活動に、個人が開拓する服飾の可能性を感じました。(渡邊)


インタビュー / 構成 : 渡邊 陽平

㈱スガタリサーチでマーケティングの業務に携わりながら、ファインアートの市場で絵描きとしても活動中

写真撮影 : 磯崎 威志 (Focus & Graph Studio

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