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2014年07月11日

【クラヤミタイケン】

近年、モノより思い出(経験)に見られる「体験」に着目した様々なサービスが注目を集めている。

 消費者の間ではモノから得られる感動や喜びは薄まっている。目に入るものでは刺激が得られにくくなっているに違いない。

 特に東日本大震災以降、失って、身軽になったことで、モノ以上に周囲の人達の暖かさや、家族や恋人、友人との繋がりを大切にする方がとても重要であることに気づいたのではないだろうか。

 それは、視覚という目に映るもの以外の「新たな価値」であると思われる。

 今回は「暗闇」という少々オカルトチックな視点に興味を抱き、「暗闇体験」を実際に行ってきた。

 完全に光を遮断した完全な暗闇を体験する「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク(以下DID)」というイベントに参加してきた結果を報告する。

 まず、「暗闇体験」と聞くと何を想像するだろうか。私がこの言葉から最初に浮かんだイメージは、「恐怖」であった。お化け屋敷やホラー映画などは苦手ではないが、あえて時間をかけてまで自ら恐怖体験を行いたいとは思わない。

 そもそも何故、人々は暗闇に恐怖を感じるのだろうか。人は自らの身を守る情報の多くを目から得ており、暗闇ではこの視覚情報が断たれることで「不安」になり、不快を感じるようだ。

この「DID」は、そうした人類が本能的にネガティブなイメージを有している暗闇に対し、あえて正面から向き合うことで「新たな発見」を得ることを目的としたエンターテイメント体験となっている。

17:20 – 実施の回に合わして17:15 会場前に到着した。

photo 1 実施会場

実施会場

 入り口のドアを開けると、待合室は日常的な光はついておらず、ところどころ間接照明に照らされた、光と闇が混在する少し薄暗い空間となっていた。

photo 2 薄暗い雰囲気

薄暗い雰囲気

 照明に照らされ、表情の半分が影に隠れた受付の女性と、開始時間を待ち望む男性2人が私を出迎えた。

 受付の女性から一通りの説明を受けると、時計や携帯電話など全ての所有物を置いていくよう指示された。「暗闇では全て不要」となるためだと言う。

 荷物を全てロッカーに預けると、スーツを着た中年の男性と、カジュアルな装いの30代と見られる男性と開始時間まで待つこととなった。待合室にはこれというBGMもかかっておらず、周囲のどんよりとした雰囲気も影響してか我々も無言なため、より一層重苦しい雰囲気となっていた。

 開始予定時刻1分前を向かえようとした頃、それまでの重い雰囲気をかき消すかのように、入り口のドアからイケイケの今時の若い男性3人組が入ってきた。

 これでメンバーがそろったようだ。今回は私を含めた6人で行動を共にすることとなった。

 受付の女性が暗闇への入り口に私達を集めると、これから先はそれぞれの顔が一切わからなくなるため、今のうちに互いの身なりを確認し合って欲しいと告げられた。

 初対面で少々ぎこちない6人の男達は言われたとおり、お互いを確認し合った。そして暗闇が待つ間へゆっくりと案内された。

 待合室よりは更に暗いものの、まだ各々の顔が認識できるほどの空間には、これからの真の暗闇の中の牽引役となるアテンドのJさんが白杖(視覚障害者用の杖)を片手に待っていた。白杖の使い方や、暗闇でけがをしないための説明が終わると、さらに奥の部屋に誘導された。

 闇への変化を感じていくため、暗闇に到達するまで段階を踏んでいった。

 明かりが徐々に1つ、2つと消えていくごとに視界が暗闇に近づいていくのがわかる。そして3つ目の明かりが消えた瞬間、ついに全てが闇につつまれた。「純度100%の暗闇」は、いともたやすく私達から日常では当前の視覚という感覚を奪っていった。

 光を失ってみてまず初めに気づいたのは、今、自分が目を開けているのかどうかわからなくなったことだ。試しに目を閉じてみたが、開けている時も閉じている時も目に入る世界は同じであった。目を開けているのに何も分からない。不思議な感覚であった。

 次に気づいたことは、方向感覚や奥行き感がなくなるということだった。見渡す限り全く同じ世界。この空間がどこまで続いているのか、自分はどこに立っているのかが途端にわからなくなった。

 周囲の状況をどうにかして捉えようとしている間に、無償に不安や恐怖感が襲ってきた。暗闇に一人取り残される情景を想像した途端、全身が ’ゾッ’ とした。

それと同時に、ついさっきまで初対面でガチガチに固まっていた未完成チームに明らかな変化が見られたことに気づいた。

 6人みな同じ気持ちだったのだろう。自分はここにいるという存在感を出そうとみなの声が次第に大きくなるのがわかった。

 「○○(自分の名前)はここにいます!」

 みながみな自分の名前を叫び合った。普段の光がある日常では滅多に見られないだろう。そこには、お互いがどこにいるのかを把握し合うことで、どうにかして安心感を得ようとする必死さが感じられた。

 その一方で、今にも暗闇に埋もれ、暗闇の一つになってしまいそうな自分自身に向けての「存在喚起」の雄叫びのようにも聞こえた。

 近くに人がいると分かるだけで心が落ち着き、互いの存在を確かめ合うだけで孤独や不安から抜け出せた。

 人ごみの雑踏に嫌悪感を抱きながら生活している普段の日常では感じることのない新鮮な気持ちであった。人がいることが当然の日常では、味わえない感覚だ。

 Jさんの指示のもと暗闇の各エリアに案内され、様々なアクティビティを体験していく中で、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされていることに気づかされた。

聴覚:公園エリアでは、水が流れる音や蛙の鳴き声が濡れる危険性を知らせてくれた。

嗅覚:住居エリアでは、どこか懐かしいい草の香りが、畳の間が近くにあることを気づかせた。

味覚:飲食エリアでは、ビールの苦味や炭酸の爽快感がより刺激さと酔いを感じさせた。

触覚:全体を通して、人肌のぬくもりや温かさに触れ合うたびに、同姓とわかっていながらもドキドキしてしまっていた。

普段では当たり前として通り過ぎるものも、「価値ある情報」として認識させてくれたのであった。

 約90分間の暗闇体験を終えた後、チームには「一体感」のようなものが形成されていた。

 暗闇では、曖昧な表現は意味をなさない。情報を伝達するのにも、伝える相手のことを意識しながら、言葉を選んでいく。聞く側も真剣に相手の声に耳をかたす。そしてお互い表情が見えないので、ちゃんと理解出来ているのか入念に確認し合う。

 気づけば、‘お互いがお互いの存在を大切に受け入れる’ようになっていた。

photo 3 体験終了後の反省会

体験終了後のチーム反省会

ここでの暗闇体験は、周囲から身を遠ざけ「孤」に浸ることで、自身の内面や潜在意識と向き合うための「戒壇めぐり」などのいわば「瞑想」とは異なるものであった。

 この体験は企業研修としても既に採用されているようである。

 確かに先入観や外見などの雑念を取り払い、研ぎ澄まされた感覚により「本当の価値」に気づくことができる暗闇という空間は、現代マーケットにおいて様々な採用の可能性を感じさせた。

・就職活動の面接

・婚活などの出会い系サービス

・マッサージや整体サービス

・飲食店(特にお酒を扱う店など)

・水商売系

・カラオケやライブハウス

私達のチームが日常に帰ってきた頃、待合室には次の回の参加を待ち望む人達で賑わっていた。

photo 4 暗闇を待ち望む人達

暗闇を待ち望む人達

男女学生の集まり、仕事帰りのスーツを着た単身男性、カップルなどさまざまな人達が暗闇を求め集まっていた。参加のきっかけは既に暗闇を体験した友人や知人からの紹介がほとんどらしい。

週末には子供連れの家族の来場も多いらしく、親子の絆を再確認し合っているようだ。

ちなみに、暗闇内で行うプログラムは参加するグループや季節によって変わるため、その都度異なる体験が出来ることからリピーターも多いとのこと。

最も驚いたことは、私達のチームの今時の若者達は実は新宿のホストらしい。店のオーナーが従業員研修として派遣しているとのこと。振り返ってみれば、暗闇の中での彼らの暗にひるむことない行動力に見られた心強さは、日ごろから培われていると言われれば納得がいく。

最後に…これは暗闇の中で私達のチームが今の季節にちなんだ「あるもの」をイメージして作成したものだが、これが何なのか分かる方がいたとしたら、その人は ‘見抜く力’ を有しているに違いない。

photo 5 チームで作成した作品

チームで作成した作品

 追伸:暗闇の中で、自信を持って行ったビールの利き酒を外してしまったことは、本質を見抜くというリサーチャーのあるべき姿として、ただただ未熟であるとしか言いようがない…。一緒にご同行頂いたチームの皆様どうもありがとうございました。

Photo 6 暗闇体験チーム

暗闇体験チーム

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