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2013年11月15日

【共働き世帯の主流化から考察する社会の変化】~第1回:DINKSはつらいよ~

 

欧米の国々に比べると遅れを取りつつも、女性にとってもっと働きやすい社会を構築しようとする流れが日本でも顕著になりつつある。現に、結婚や出産をしても夫婦共働きで家事と両立させる家庭が増えてきていることには私自身、働く女性の一人としてありがたい風潮だと感じている。しかし、共働き世帯が主流に転じ、社会が変化の真っ最中である現在、その変化に伴って摩擦や一種のバランスの崩壊も生じているのではないかと考える。そこで、日本の共働き世帯の現状について3回の記事に分けて検証していくことにした。第一回目である今回はまず、一昔前と現在を比較することで日本がたどってきた変化について理解したいと思う。

まず国内における女性の雇用にまつわるポイントをいくつかピックアップした。

Ÿ   1986年:男女雇用機会均等法施行

Ÿ   1992年:育児休業制度が施行

Ÿ   1996年:女性の短大への進学率(23.7%)が四年制大学への進学率(24.6%)を初めて上回った

Ÿ   1997年:共働きの世帯(949万世帯)が専業主婦世帯(921万世帯)を上回り、その後も増加を続けることになった年

Ÿ   2002年:“共働き世帯”の比率は“男性のみ雇用者世帯”に対し57万世帯多い51.5%

Ÿ   2012年:“共働き世帯”の比率は“男性のみ雇用者世帯”に対し263万世帯多い57.0%

(厚生労働省「国民生活基礎調査の概要」より)

共働き世帯の増加男女雇用機会均等法が施行された10年後に、女性の四年制大学へ進学する比率が短大への進学率を上回り、四年制大学と短大を合わせた進学率が男性の大学進学率とほぼ同じになっている。更に翌年からは共働き世帯が専業主婦世帯を常に上回るようになり、増え続ける傾向にある。

こうした数字から女性の社会進出が増えていることと、共働きの世帯が増え続けていることは証明されているが、それは単に「働きたい女性の想いが叶えられている」という楽観的な説明では済まないようである。生活を営むために仕方のない手段として共働きを選択している家庭も多いのが現状なのだ。

共働きと言えばDINKSという言葉があるが、近年は本来DINKSが持っていた意味合いと現実との間にずれが生じてきているようである。元々DINKSはアメリカでDINKY(Double Income, No Kids Yet)として1980年代に20-30代のエリートサラリーマン(ヤッピー)が絶頂期となった時期に出現した略語である。 日本でもDINKSが使われるようになった頃は子供を持たずに共働きだから経済的に余裕がある夫婦というイメージで使われていた。

1世帯当たり平均所得金額の年次推移しかし近年に至っては共働きであることと「経済的に余裕」であることは必ずしもリンクしているわけではない。2013年6月にマイナビニュースが200名の男性に対して行ったアンケート調査によると84%の人が結婚相手に専業主婦を望まないとし、その理由として最も多く挙げられたのは「共働きでないと暮らしていけないから」だったと言う。自分一人の収入ではやっていけない現状や、将来への不安というのが「共働きでないと」という思いへと多くの男性を駆り立てている様だ。それに対して独身女性の32.5%が専業主婦になりたいと答えているので、共働き夫婦の全員が希望して共働きという形をとっているわけではないことが推測できる。また、夫婦二人での生活も共働きでなければ成り立たないということは、子供を産むことがいかに経済的難関であるかは容易に想像がつく。2013年6月に楽天リサーチが25歳~44歳の女性500人に対して行ったインターネット調査によると、94%の対象者が妊娠に対して不安があると回答し、その最多の理由として74%の人が回答したのは「仕事との両立に関する不安」であり、二番目に多かった理由としては63%の人が「経済面に関する不安」だった。Source:PRTIMES 第一子の出産年齢は年々上がり続けており晩産化の問題も度々話題にされるが、その理由として経済面に関する不安と、その不安故に共働きが出来なくなる事に対する懸念が大きく関わっているのである。つまり、バブル期のDINKSに対して現在のDINKSは子供がいらないから作らないのではなく、作りたくても経済的に難があるから「作れない」という背景が最大の違いなのかも知れない。

かくしてこれまでは「DINKS=余裕がある世帯」という認識が当たり前だったが、近年は「余裕がないからDINKS」というパターンへ変化している。先ほどの年表から、2002年からの10年間で共働きの世帯率が5.5%増加したことが分かる。共働きが増えているという事は平均所得が上っていると考えるのが自然だが、実はこの10年間で全世帯の平均所得金額は減少傾向にある。2002年から2011年の9年間で589.3万円から548.2万円まで、なんと41.1万円も下がっているのである。(厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」より)サンプル中の高齢者世帯と児童のいる世帯に関しては、この10年間で所得はほぼ増減していない。つまり、マイナス41.1万円というのは単身世帯とDINKS世帯から出た数字であると推測することができる。ワーキングプアとまではいかないが、働いているにも関わらず所得が年々減っていくという大問題が、数字にも明確に現れていたのだ。生活に対して昨年行った意識調査でも、生活が「苦しい」と答えた人は2002年には53.8%であったのが60.4%にものぼったとあるがそれも無理のない話だろう。

ちなみに、今でも「DINKS向けマンション」というくくりで物件を紹介している不動産屋もあるのでどういったマンションやアパートが「DINKS向け」なのか調べてみた。その特徴はこちらである:

・ほどほどの大きさの賃貸

・駅チカ

・近隣に夜遅くまで営業しているスーパーがある

・閑静な住宅街より市街地中心部や商業地

・日当たりはさほど考慮されない

・1LDK~2LDKでLDKが広めにとってある

Source: HOME’S

「DINKS=余裕がある世帯」であった時代は、こういった物件の立地として代表的なのは港区であった。共働きをしつつ、週末には友達を呼んでホームパーティーをするなど、余暇も楽しむ余裕があった。しかし最近のDINKSは、生活のために仕事に追われている形が多く、賃貸の立地としては、例えば西武線のような私鉄沿線が代表的とでも言えよう。

こうした背景を見ていくと、共働きが主流になったことは女性の地位が上がったからというよりも経済的な圧迫から必然的に起こった現象のように思える。ただ、そうした中でDINKS世帯においては男女間の収入に差がなくなってきており、場合によっては女性の方が高収入というケースも珍しくはない。そのため職場でも家庭でも性差はなくなってきており、男女の役割に変化が見られるようになった。一昔前までは仕事は男性の役割、家事は女性の役割という認識が当たり前であったが、夫婦共にどちらもこなす時代はとっくに始まっている。そうした中で近年見られるのは、男性に対しては家事サポート、そして女性に対してはワークライフサポートというサービスや製品である。これは主夫業へ一歩足を踏み入れた男性たちと、社会進出へと足を踏み出した女性たちを支援するためのものであり、今後増え続けるであろう共働き世帯を支える大事なサポートである

次回はそれらについて細かく検証していきたいと思う。

 

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