はじめに
こんにちは。調査に参加する対象者をリクルートする、コーディネーターの羽鳥です。
スガタリサーチでは、B2Cに加え、B2Bやメディカル等、幅広い分野で定性調査を実施しています。中でもメディカル調査は、ここ数年、私たちが実施する調査全体の20%程度の割合を占めており、あらゆる疾患テーマでの調査を実施しています。
メディカル調査では、医師、患者両方の調査を行いますが、このコラムでは、医師調査のリクルートに関して、ご紹介します。またコラムの後半では私が担当する事が多い、海外のクライアント様向けの医師調査のリクルートの特徴に関しても、ご紹介させて頂きます。
医師調査の実績
弊社で調査経験が豊富な疾患テーマは、2型糖尿病、自己免疫疾患、オンコロジー、血液・循環器疾患などです。ちなみに、私がここ5年間でリクルート担当をした具体的な疾患テーマの一部は下記の通りです。
例)1型・2型糖尿病、RSウィルスワクチン、副甲状腺機能低下症、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、遺伝性血管性浮腫、甲状腺眼症、転移性大腸がん、ウィルソン病、転移性非小細胞肺がん、喘息、アテローム性動脈硬化症、認知機能障害、血友病、全身型重症筋無力症、軟骨無形成症等
このように、一般的な疾患から難病・希少疾患まで様々です。疾患から更には、治療薬、治療ライン、疾患の重症度、医療機器など、調査ごとにフォーカスしたいポイントが異なるので、そう考えると、医師調査だけを切り取ってもテーマは多岐にわたると思います。
医師リクルートの流れと特徴
基本的には医師パネルに登録している医師へwebアンケート上で調査票(スクリーナー)を聴取し、回答データを選定し、対象者をリクルートします。
弊社のB2Cのリクルートでは、スクリーニングをアンケートで実施するだけでなく対象者と直接電話で話し、条件確認やインタビューの適正などを担保する事を強みとしています。医師の場合、医師への電話確認ができないため、回答したアンケート(スクリーニング)をもとに、調査テーマにあった適切な対象者を見極め、獲得できるかが、重要なポイントとなります。
私が医師のリクルートをするうえで工夫しているポイントをいくつか紹介致します。
―データ選定 (医師が回答したアンケートをもとに、適切な対象者を選定する作業)
データ選定は、条件や、回答の整合性を確認する上で、見逃しはあってはいけない作業です。私にとっては、プレッシャーも感じる場面でもあります。この医師は、調査テーマにあった適切な対象者なのか?という事を、データから最大限読み解いていこうという気持ちで臨みます。的確なデータ選定が、よりよい対象者をリクルートするための大切な作業になります。
私の場合は、以下の流れでデータ選定を進めるようにしています。
1. 条件の取りこぼしが無いように精査する
以下3つのポイントでデータ選定を行います。
- 対象者条件に合致しているか
- 回答矛盾はないか
- 整合性はとれているか
具体的には以下の通りです。
・薬剤の処方件数に矛盾がないか
医師のスクリーナーでは、薬剤の処方患者数等を聴取する設問もよくあります。
回答の整合性を高めるために、アンケートに入力制御の設定をかける事もあります。但し、アンケート画面の仕様上、複雑な入力制御の設定ができない時は、データ選定で整合性を確認します。薬剤の処方件数が、持ち患者数を大幅に超えていないかなど、正確な回答をしているかも確認します。ここで回答矛盾があればメール等で条件の再確認をするなどの対応を行います。確認が取れない医師や、正確な回答でない場合は、対象外になる場合もあります。
2. 全体データ(すべての応募者のデータ)から傾向を把握し、対象者の優先順位をつける
全体データからは、何かしらデータの傾向やつながりはないかという視点でみています。例えば、この治療は大学病院に勤務している医師のほうが患者数は多そうだなと、大まかにみえてきます。さらに、そのような医師の中でも、極端に多すぎる回答の場合一旦は避けておこうという判断や、治療患者数の幅を持たせるために、その中での優先順位付けをどうするか、などの判断につながります。
このように、回答データの傾向などを踏まえ、候補者を絞り込んでいきます。
海外のクライアント様向けの調査の特徴と工夫
ここからは、私が担当する事の多い、海外のクライアント様向けの調査の特徴や工夫に関して、ご紹介します。
海外のクライアント様が、あらゆる国やマーケットで実施する、グローバル調査の場合、調査票(スクリーナー)は、マーケットが違うとも、共通のものになる事があります。日本の状況に適した調査票になっていない事が多い為、適した調査票(スクリーナー)にローカライズする事も大切なポイントとなります。
私が、海外のクライアント様向けの調査でリクルートを行う際の工夫や事例をいくつか紹介いたします。
―スクリーナーのローカライズ
スクリーナーのローカライズでは、グローバル仕様で設定された条件や設問内容を、日本の医療状況に合わせたものに修正、加筆、変更をする必要があります。但し、クライアントの意向や意図を大きく変えない範囲に留めるように注意します。
グローバル仕様のスクリーナーでは、日本で該当するような専門医がいない、あるいは日本では使われていない用語といった、海外特有の専門医セグメントの条件が付いてくることもあります。その際、クライアントが定義する専門医像にどうやったら近づけていけるかを考えます。
例えば、循環器疾患調査の際は、インターベンション専門医というセグメントがよく出てきます。「インターベンション専門医」のローカライズ例をご紹介します。
■インターベンション専門医とは:
低侵襲な、カテーテルを使った心臓や血管の治療を専門的に行う医師
■海外と日本の違い
<海外の場合>主専門としてインターベンションという専門があり、インターベンションをする医師・しない医師に分かれている。
<日本の場合>循環器内科医が、インターベンションを実施し、主専門は循環器内科になる。
循環器内科医がインターベンションを自身の専門領域だと自認されているかどうかは、医師自身の考えによる。
■ローカライズの工夫:
専門性の確認・学会所属・インターベンション割合をスクリーナーの設問に入れて総合的に判断できるようにしています。
このやり方をベースとしていますが、クライアントの意向や考えは案件ごとに異なるので、どういった部分を優先されるのかを確認し、都度調整をしています。
―その他、海外のクライアント様向けの調査で気を付けるポイント
日本の状況にあった適切な対象者を選定できているかを注意する必要があります。
私が海外のクライアント様向けの調査を行う際に、気にかけている視点をいくつかご紹介します。
・条件となる治療薬は、日本で上市された薬剤なのか、日本の治療ガイドラインや病院サイトなどにも記載がある標準的な治療なのか、治療選択肢はこれで問題はないのかに注意する事。
・日本では上市したばかりで処方医自体が少ないのでは?かなり重症の場合の治療で限定されるなら、あまり多くは出現しないのではないか?など、処方数の条件はクリアできるかという点も注意します。
おわりに
医師のリクルートでは、初めて扱う疾患も少なくありません。毎回基本的な知識から勉強する事もありますが、初めての場合でもプロジェクトを成功させるため、以下のような事を心掛けてリクルートを行っています。
・調査テーマとなる疾患の治療・医療用語の勉強をして疾患理解を深める
・専門的な内容はメディカルベンダーの知識や意見を伺う
・リクルート経験を積む中で注意点を蓄積・チーム間で共有する
私は医師のリクルートをしていく中で、未来の医療業界の発展に少しでも関わっていると実感することもあり、調査の成功を目指したいというモチベーションにも繋がっています。今後も適した対象者をリクルートするための努力を積み重ねていきたいです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!