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【2015年のトレンド予測】ウェアラブル端末
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調査事例

【2015年のトレンド予測】ウェアラブル端末

2015/03/06
REPORT

2013年ごろから多くの商品が市場に出てきたウェアラブル端末。昨年にはAndroidがウェアラブル端末向けのプラットフォームAndroid Wearを発表し、秋から年末にかけてメーカー各社がこぞってスマートウォッチを発売した。また、今春にはAppleもApple Watchを発売する予定である。スマートフォンが一定の普及を迎え、その成長率に若干の鈍化が現れ始めたことと、スマホ普及率の上昇によるプラットフォームの形成がなされたと言う意味で、携帯端末分野における新たなトレンドとしてウェアラブルが今年ははずせないものだと言えそうだ。

【ウェアラブル端末とは】

ウェアラブル端末とは、その名の通り、身につけて使用する端末のことであり、手首や頭部につけて使用するものが多く発売されている。基本的にはスマートフォンと連携することによって、様々なことが可能になる。各社からいろいろなタイプが発売されているが、まず、その形状によって3つのタイプーリストバンド型、腕時計型、メガネ型―に分類していくつかの製品とその特徴をご紹介する。

【リストバンド型:ライフログ・アクティビティトラッカータイプ】

2013年ごろから多くの製品が発売され、まず最初に「ウェアラブル」として世間に浸透したのがこのタイプであろう。代表的な製品としては、Fitbitの「Fitbitシリーズ」やJawboneの「UP」、ナイキの「Nike+ FuelBand」などが挙げられる。ラバーバンド製で軽量に設計されているものが多く、常に身に着けることで運動量や活動量、心拍数や睡眠についてスマートフォンやクラウドと連携してトラッキングが出来るものがほとんどである。価格も1万円代と手ごろで、現在販売されているウェアラブルの中で一番多くの人が持っているのがこのタイプではないだろうか。

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Fibit
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JawboneNike+ FuelBand

<特徴>

これまでの万歩計などとは違い、運動の種類や強度を加速度センサーや心拍計で計測することでより正確な運動量を測ったり、アプリケーションと連動することでより効率的な運動へのフィードバックを得ることができる。また、ランニングやウォーキングの移動距離や場所などがGPSを使用することによって可視化できる。また、SNSを利用することによって、友人と情報を共有できたり、競争できたりするのも特徴である。
各社端末も様々なタイプを出すと同時に、ログを管理する専用アプリケーションにも工夫がなされている。例えば、Jawboneではその日の食事内容を詳しく記録することができる。その日に食べたものを登録するとその栄養素をデータベースから計算し、概算でその日摂取した栄養素を算出してくれる。また、コンビニやファミレスなどの商品はバーコードを読むとデータベースからその商品の情報を引っ張って記録してくれるので、入力が簡単である。そして、運動・睡眠・食事をひっくるめた情報―ライフログを管理することによって、より健康的でアクティブな生活の実践が出来る、といった具合である。

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このライフログ系のウェアラブルだが、2013年から2014年の登場当初は非常に注目をあびたが、現在は若干の落ち着きを見せているように感じる。なぜだろうか?それは「飽き」ではないだろうか。

<課題・これからの展望>

このリストバンド・ライフログ型ウェラブルを最初に買った層は主に20代から30代、比較的若く、フィットネス・ダイエットに興味を持っている層かデバイスに興味関心がある層だったのではないだろうか。最初こそ目新しさ、新しい生活スタイルの提案と言うことで飛びついたが、強いモチベーションが維持できなかったため、もはや「飽き」て続けられなかったのだと推察する。ダイエットが「なんとなく」という気持ちで続けられないのと同じである。健康上、特に差し迫った問題がない若い層では続けるには高いモチベーションが必要であろう。逆に、日ごろからスポーツを行っており、より正確にログを記録したい人たちにとっては機能面で物足りない点があり使用をやめてしまったケースもある。

また、リストバンド型の「見た目」にも一つ課題がありそうだ。いかにもスポーティーな見た目はオフィスで浮いてしまう、ファッションに合わなかった、との声も見られた。ラバー製ということで耐久性に欠ける部分があり、毎日使っているうちに壊れてしまい、それを機に使わなくなったとの意見もよく耳にした。

上記を踏まえ、今後は、40代・50代のより健康意識が高い層へのアプローチがより必要であると思われる。この層にも徐々にスマートフォンが普及してきており、今後の拡大に期待が持てる。

参考:
私がウェアラブルを卒業した理由――買う前に絶対知っておきたいユーザー体験談(IT media)
正月太りをこれで解消! 価格別に見る活動量計20機種総まとめ(IT media)

【腕時計型:スマートウォッチ】

次に来るウェアラブルとして今注目を浴びているのが腕時計型のスマートウォッチではないだろうか。こちらも2013年ごろから徐々に製品が発売されていたが、昨年のAndroid Wearの発表によって、急激に製品が多く出てきた。代表的なものとしてはPeebleの「Peeble」やSONYの「SmartWatch」、サムスンの「GALAXY Gear」、ASUSの「Zenwatch」、今春発売予定であるAppleの「Apple Watch」などであろう。

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PeebleSmartWatch 3

<特徴>

スマートウォッチはタッチ画面を備えており、スマートフォンと連携してメールやSNSの通知、電話が受け取れたり、マップとして使用することが出来る。2013年市場に出てきた当初はタッチ画面の反応が遅かったり、対応アプリが少ないゆえにスマートウォッチ上でできることが限られ、多くの人にとってスマートウォッチでなけらばならない必然性をあまり感じられないものであった。加えて、リストバンド型ウェアラブルと同様に、ラバー素材のものが多く、腕につけている際に悪目立ちしてしまう部分があった。しかしながら、昨年から続々と発売されだしたAndroid Wearは徐々に機能が拡充しており、スマートフォン本体の巨大化と相まって、これからよりスマートフォンを使いこなすためのアイテムの一つとして定着していく可能性が見えてきた。価格は3万円台前半が主流だ。

Android Wearは手首をひねって時計を見る動作で起動し、画面を確認することができる。基本的な機能は、上記に挙げたようなものであるが、音声によって操作することが可能である。例えば、「5時に帰る」ということをメールしたいとした時、まずAndroid Wearに向かって「OK, Google」と話しかける。その後「○○にメール送信、5時に帰る」と吹き込むと、ペアリングされたスマートフォンからメールを送ってくれる。また、目的地までの経路を検索したい時、「○○から○○までの行き方」のように吹き込むと、検索した情報を表示してくれるのである。このようなことを鞄やポケットからスマートフォンを取り出さずに行えるのである。今後対応のアプリが増えることで、より便利な機能が追加されていくことと思われる。

また、デザイン面でも改善が見られる。以前のスマートウォッチはラバーバンドで四角いフェイスが主流であり、フェイスに表示する文字盤のデザインも数種類からしか選べないと言うことがほとんどだったが、現在は丸フェイスやレザーバンド、スチールのものなども登場し、より従来の時計に近い見た目になってきている。文字盤も豊富な種類から選んでダウンロードすることによって自由に変える事が出来る。時計はファッションの要素も強いのでこれは大きな魅力であると言えるだろう。

LG G Watch RASUS ZenWatch
LG G Watch RASUS ZenWatch

 

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豊富なフェイスデザイン

<課題・これからの展望>

これまでは、ガジェット好き・新しい物好きのための器機だと思われていた感の強かったスマートウォッチだが、今春のApple Watchの発売もあり、その認知度・関心度は高まってくると思われる。課題としては3万円からするものを如何にして多くの人に「必要だ」と思わせることが出来るか、ということが挙げあれる。デザイン面・機能面で進歩が見られるが、まだまだ多くの人にとっては「スマホで事足りる」事も多く、どうしてもスマートウォッチが必要 / 欲しいと思う強い動機がいまひとつ足りないようにも思う。より豊富なアプリの登場、スマートウォッチを受け入れるための土壌(音声で操作することへのハードルの低下などを含めて)の形成が2015年にできるかどうか。それが日本でスマートウォッチが定着するかどうかの今後を左右するだろう。

参考:
買うならどれ? 価格別に見るAndroid Wear端末まとめ(IT media)
スマートウォッチ比較(セキュリティソフト比較サイト)

【メガネ型】

メガネ型の代表格は、2013年にエクスプローラーエディションとして開発者限定で発売されたGoogleの「Google Glass」が最も有名であろう。その名の通り、メガネ型の端末で、メガネのレンズ上に様々な情報を表示し、カメラが搭載されたメガネ型ウェアラブルである。他にも、VUZIXの「M100スマートグラス」やEPSONの「MOVERIO」、SONYの「SmartEyeglass」などの製品がある。このタイプは前述の2つとは違い、これから主にB2Bの分野での活用が期待されるように思う。

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Google GlassEPSON MOVERIO

<特徴>

片目もしくは両目のレンズが透過型のディスプレイになっており、映像や画面が空中に浮いているように見えることが特徴である。スマートフォンやクラウドからの情報を表示し、比較的大きな画面で多くの情報を表示させることができる。また、頭につけるということから、ハンズフリーになるという利点がある。

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Google Glassによるマップの表示

Google Glassは発売された当初から、カメラがついていることで、プライバシーへの侵害が懸念されると言う声が大きく、アメリカではGoogle Glassを付けたままでのレストランの入店を拒否するといったようなことまで起こった。結局、Googleは本年1月20日でGoogleはGoogle Glassの販売を休止している。メガネ型ウェアラブルはB2Cの分野での普及のハードルは高いといえそうである。

<課題・これからの展望>

メガネ型ウェアラブルはその特性からB2Bの分野での活用が期待される。ハンズフリーなので両手で作業が行え、多くの情報を着用者に表示し伝達できるということから、さまざまな作業現場での作業指示(機械の整備や点検、倉庫内での物品のピックアップ場所の指示など)、警備や災害救助の現場で現場支援(現場までの道順の指示、現場状況の伝達など)活躍が期待されている。また、カメラにより装着者の見ているものをリアルタイムで別の場所から見ることができるということから、上記の様な場面で遠隔地から別の人物が作業者と同じものを見ながら指示を出すことができるというメリットもある。実際、いくつかの企業では試験的な導入が始まっている。JALと野村総研は2015年からホノルル国際空港で機体整備や貨物業務にGoogle Glassを使用する実験を行っている。機体の整備では日本の本社スタッフが整備者のカメラについた映像を見ながら指示を出すなどの後方支援を行う。これまでは紙の指示書やメールを見ながら行っていた業務も、ハンズフリーで行えるようになることで業務の効率化が期待される。

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もう一つメガネ型ウェアラブルにおいて期待されるのは、観劇やスポーツ観戦イベント会場でのガイドの表示や情報の表示である。たとえば、オペラや歌舞伎を見る際、実際に見ている映像の上に字幕を表示させたり、サッカーなどの観戦中にゲーム状況やtwitterなどのSNSの情報を表示させることなどは有用だ。こういった使い方もやはり、個人で購入して使用するというよりは、レンタルでのサービスという形で近い将来に実現されてくるのではないだろうか。

文字数の関係でこれ以上の紹介は今回は控えるが、今現在上記以外の形態でも様々なウェアラブルが開発されている。今後の展開と、はたしてどのようなウェアラブルが定着していくのか、楽しみである。

参考:
情報通信白書(総務省)
4タイプ分類でスッキリわかる、ウェアラブルデバイスの最新動向(IT Leaders)

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