COLUMN
【共働き世帯の主流化から考察する社会の変化】第3回目:「育児萌え!?」
ホームSUGATAコラムREPORT【共働き世帯の主流化から考察する社会の変化】第3回目:「育児萌え!?」

調査事例

【共働き世帯の主流化から考察する社会の変化】第3回目:「育児萌え!?」

2014/02/28
REPORT

 

【共働き世帯の主流化から考察する社会の変化】の2回目投稿で働く女性をサポートする様々なサービスや商品について考察したところ、女性向けに限ったある特徴が分かった。仕事のステップアップを後押しするようなサポートは男女共に存在しているが、働く女性に対してはそこに加え、働いた自分へのご褒美としてプチ贅沢な商品やサービスが広く人気を集めているということが見えた。

今回は共働き夫婦の男性側に注目し、特に家事や育児に励む(或いは励みたいと思っている)男性のことを指す「イクメン」に着目してみたいと思う。

まず始めに、男性向けの家事や育児のサポートサービスについて調べてみたのだが、そこで驚いたことがある。共働き夫婦が増える中で、働く女性のための家事サポートや仕事のサポートサービスが増えているのと同様に、男性に対しても家事や育児のサポートやサービスが増えているのでは、と考えていた。しかし、実際はそれらの活動をより積極的に支援するサービスというよりも「育児休暇を取れる環境を確立しよう」という最も根本的な問題に焦点が当てられていたのだ。

厚生労働省のデータによると、2005年の男性の育児休業取得率はわずか0.5%であり、男性が家事や育児に費やす時間も先進国の中で最低水準だったという。そこで、2006年には男性が育児休暇をより取得しやすくなるような内容を含めた育児・介護休業法の改正があった。その後は毎年男性の育児休業取得率が1%を超えるようにはなったものの、この数字はまだまだあまりにも低いと問題視されている。

取得率がなかなか上がらない理由としては、職場で育児休業をとり難い環境になっているということが大きいだろう。そこで、政府から企業に対しては男性の育児休業取得を推奨するように様々な取り組みが行われており制度としての努力は積極的に行われているように見える。

また、男性の育児休業取得率が低い理由のもう一つは本人の意識に問題があると考えられる。

恐らく多くの人が社会で働く中で「社会的地位」や「世間の目」「昇格」や「給料アップ」などを意識していると思われるが、子育てではこれらは見え辛いだろう。このような目に見えた自己成果を求める人にとって、家事や育児を頑張ってもそれが自分自身の成長に直結していない様に感じてしまうかも知れない。

そこで、このような

状況を打破するために、国を挙げての支援として代表的なものが厚生労働省が「イクメン」をPRするために立ち上げた「イクメンプロジェクト」サイトである。ここではイクメンたちがその意気込みや家事育児をすることで感じた事、感謝の気持ちなどを投稿し合う「イクメン宣言」というコーナーや、育児休業制度に関する説明のまとめなどがあり、男性が育児休業を取得しやすいように気持ちのサポートから物理的なサポートまで提供している。

日経デュアル

また、日経は「働くママ&パパに役立つノウハウ情報サイト」とうたう日経DUALを提供しており家事育児に奮闘するパパを応援するコンテンツも多く掲載されている。Source:「イクメンプロジェクト」「日経DUAL」 

こうして見ると、イクメンをサポートするために大きく二つの努力がなされていることが分かる。一つは制度や法律の整備、そしてもう一つはイクメンの魅力について更に広く認知してもらおうというPRであるが、それは個人のスキルや心構えにフォーカスされ、イクメンに対する産業的、マーケット的視点が欠けているという大きな落とし穴があった。

働く女性に対しては「OLファッション」や「OLのためのディナープラン」など、OLをターゲットにした様々な商品やサービスがあり消費活動が活発化している。それと同時に、

自分が働いているからこそ受けられる恩恵、働いているからこそ似合うファッションがある等、「働く女性」であることに対して自己意識が高まる仕掛けにもなっている。

しかしイクメンに対してはそのような商品やサービスが無い、あるいは少なすぎるのはなぜだろうか?この疑問に対して、イノベーター理論を使った仮説を作ってみた。イノベーター理論とは、「新商品や新サービスの市場浸透に関する理論のこと」であり、新商品や新サービスに対する購入行動をもとに、顧客を5つのタイプに分類している。Source:イノベーター理論

イノベーター理論

この理論に基づいて考えてみると、恐らくイクメンを一つの消費者カテゴリーとしてマーケティングするには、少なくとも2.5%いるイノベーターを確保できる程度の消費者が必要と思われる。厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、平成24年の男性の育児休業取得率は1.89%であり、イクメン向けのマーケティングを行うにはまだ十分なリターンが見込めない。つまり、イクメンをターゲットにしたマーケットが登場する可能性として、男性の育児休業取得率が2.5%を超えるタイミングが一つの目安になると考えられる。

次に、そのようなマーケットが出来たとしたらどのような商品やサービスが登場するのだろうか。

前述したように、働く女性のための商品やサービスの特徴は、仕事を忘れさせ、仕事から解放してくれるような物だった。それではイクメンのサポートも同様に家事や育児のことを忘れさせてくれる物なのだろうか。私は、そこに男性と女性のニーズの違いがあると考える。

一般的に、女性の方がファンタジーに 夢を抱いたり慰安旅行にお金と時間を費やすなど、エモーショナルな快楽を求める傾向がある。対して男性の傾向は、釣りやスポーツ等自分の趣味に時間を費やしたり、一つの物をとことん追求し極めたがるようなオタク気質がある。

つまり、イクメンが望んでいるのは家事や育児からの解放ではなく、やるとなったらとことん燃えさせてくれるような商品やサービスではないだろうか。例えば育児に費やした時間と労力がポイント制で積み上がっていき、それを他者と競い合える仕組みなど、「育児萌え」を支援するサービスがニーズに答えてくれるのかも知れない。

イクメンのハートを掴むポイントさえ抑えられれば市場を活性化する商品やサービスが生まれ、それらが注目されることで効果的なイクメンのPRにもなると期待できる。働く女性のためのサービスを参考としながら、イクメン市場を今後どのように盛り上げていけるかこれからも考えていきたい。

【ご意見ご感想がございましたら、こちらのメールアドレスまでご連絡ください。: goiken@sugataresearch.com 】

マーケティングリサーチの
ご相談はこちら

ご依頼、ご相談のお問い合わせは
下記よりご連絡ください。
03-5304-0339受付時間:平⽇ 10:00〜18:00