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【共働き世帯の主流化から考察する社会の変化】第2回目:「志高く、スキルを磨くだけでは・・・」
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調査事例

【共働き世帯の主流化から考察する社会の変化】第2回目:「志高く、スキルを磨くだけでは・・・」

2014/01/20
REPORT

「一個人が志高く、よりスキルを磨きつつ働けるようなワークライフのサポート」だけでは私はやっていけない。

厚生労働省の発表によると、2013年の春に就職を希望した大学卒業生や高等専門学校/短期大学の卒業生の割合は、男子が63.2%であったのに対し女子は79.7%と16.6%も上回り、しかも実際の就職率も男子が93.2%であったのに対し女子は94.7%と、1.5%も上回ったとある。Source:厚生労働省 また、前回の投稿で話したように近年日本では卒業直後の就職率に留まらず結婚後も共働きを続ける夫婦が増えている。そこで今回注目したのが、そんな女性のワークライフを応援する、女性向けならではのサポートである。

大きく分けて、働く女性を応援するサポートには①アクティブサポートと、②パッシブサポートがあると考える。

まずアクティブサポートについてだが、「アクティブサポート」とは女性がより高い能力と高いモチベーションを持って仕事に邁進出来るように応援するサポートと考えている。例えばビジネスセミナーや研修、また、女性が働きやすく平等に扱われる環境づくりの企業努力などもそうである。

従来、男性用に設けられたビジネスセミナーや研修、資格取得のためのサポートなどは数多くあったが女性向けのものは多くなかった。しかし近年は女性のためのものが増えつつある。例えばワークライフバランスを見つめ、女性社員が仕事もプライベートも充実させてキラキラ輝けるようにと設けられた「女性社員キラキラ研修」や、仕事のスキルをよりレベルアップさせたいという女性のための「女性社員のためのワンランクアップの仕事術 ~「あの人と一緒に働きたい」とご指名がくる働き方」という研修など、ネーミングもユニークなものも多く見受けられる。他にも管理職を目指している女性のための研修から、子育てと仕事を両立させ時短勤務を行っている女性のための研修まで様々な環境で働く女性のニーズに合わせたプログラムが充実してきている。

研修

また、女性にとって魅力的な会社であるということが、企業にとっても優秀な人材を採用する鍵になる。少し前のデータではあるが、2006年にリクルートが働く女性向けに行った意識調査によると現在管理職に就いている女性と管理職志向を持っている女性は合計50%程度おり、このような管理職志向派の女性が企業選びにおいて最も重視するのは「フェア」であるということだったそうだ。フェアというのは例えば「仕事の成果や業績が正当に評価される」といった、男女間の差別がない事を示している。このようなフェアな会社であるために、会社側は当然企業努力が必要である。Source:RECRUITE

近年働く女性が増えている傍ら、未だに女性の営業職や管理職が少ないなど、簡単にはなくならない問題も残っている。そこで男女雇用均等法が施行されてから30年近くになる今も、更に均等な取り扱いを実現させるために様々な取り組みが政府や団体から行われている。その中に厚生労働省が行っている「ポジティブ・アクション」という取り組みがある。ここでは主に女性の活躍を促進させる活動の他、格差を解消させることによって企業の活性化も推進させる活動を行っている。Source:厚生労働省

企業としても、人を雇うことで多大なお金と時間を投資しているのだから男女問わず管理職志向を持った積極的な人材を採用したいと思うのは当然だろう。そこで、「ポジティブ・アクション」は、そういった人材と「フェア」な会社のマッチングも手助けしている。主に女性の活躍を促進させる活動のほか、男女間の格差を解消させることによって企業の活性化を推進させる活動も行っている。また、「均等・両立推進企業表彰受賞企業」の一覧ページがサイト内にあり、「均等」とワークライフバランスへ貢献する制度と環境を提供している会社を見ることができるので就職や転職を検討している人にとっては一つの判断材料として参考になるであろう。Source:厚生労働省

このように一個人がより志高く、よりスキルを磨きつつ働けるよう、ライフワークを促進するような「アクティブサポート」は男性に対しても提供されてきた。だが興味深いのは別の角度から働く女性を応援する「パッシブサポート」である。「パッシブサポート」とは、ワークライフをガツガツと促進していく「アクティブサポート」に対し、仕事で溜まった疲労やストレスを解消するために仕事から一時的に解放させるサポートと考える。

gossip働く女性が増える中で、そういう人をターゲットにしたエンターテイメントや製品、出版物、サービスなどが数多く登場している。例えば日経WOMANでは、働く女性のためになる情報を掲載しているだけでなく、女性がオンラインで井戸端会議ができるような「女子部」という掲示板を設けている。女子部では、あらゆるテーマについて女性同士が会話を交わす場となっており、仕事に関する話題も多くある。ここでは全員ニックネームで会話に参加するため、仕事に関する悩みや不満なども気兼ねなく話し合うことができ、働く女性にとってストレス発散場ともなっているのだろう。

他に、働く女性にとって魅力的な情報を集め独自のプランも紹介することで多くの女性から人気を集めているOZmallという情報サイトもある。「頑張った自分へのご褒美」というフレーズをよく耳にするが、家事と仕事を両立させ頑張っている自分に、少しくらいの贅沢は必要だと考える女性が多いようだ。だからこそ、特別裕福な家でなくてもちょっとした贅沢を楽しめるリーズナブルなプランが人気なのだろう。つまりこういったサービスは、働く女性のワークライフを応援するためと言うよりは、「アウト・オブ・ワーク」を充実させるためのサービスと言える。Source:OZmall

OZ

このような「自分へのご褒美行為」を後押しさせるサービスが続出する様子は、働く女性が増加した頃から起きた、対女性に特有の現象ではないだろうか。昔、男性が外で働き女性が家事育児を行っていた頃は働く男性に対してご褒美を与えようという考えなどなかったはずだ。むしろ、普段家にいない分、休日くらいは家族サービスをするべきだ、といういくらか冷ややかな視線で見られるところがあった。つまり「パッシブサポート」というのは働く女性の出現により新しく出来たマーケットと解釈される。

もう一つ注目すべきは、これに連動する形で、これまでワークライフに対しては「アクティブサポート」しかなかった男性についても、共働きの増加、家事育児と仕事との両立へのプレッシャー、加えて草食系の増加等による、「男性に対するパッシブサポート」と思われる。次回はそれも含め家事や育児に奮闘する男性へのサポートに着目し、共働きをデフォルトとする社会について改めて考察したい。

 

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