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2015年07月17日

《 CreatorによるMarket Creation 》 #001 立花奈央子さん 前編

個人規模でユニークな活動を展開するクリエイターにお話を伺い、彼らの創作や活動内容についてインタビュー形式で紹介しています。市場動向をピックアップして紹介する「マーケティング Eye Watch」の番外編として、不定期で掲載しています。

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女装コーディネーター 立花 奈央子(株式会社オパルス/フォトスタジオ大羊堂代表)

女装のメイク、撮影に特化した「フォトスタジオ大羊堂」を経営する他、女装撮影や女装メイク講座講師を行う。これまで手がけた男性はジャニーズ所属のトップアイドルから70歳のベテランまで、のべ1000人を超えている。女装文化のスペシャリストとして、現在はテレビや雑誌を中心に女装コーディネーター、フォトグラファー、メイクリストとして活動中。

【大羊堂webサイト】https://taiyodo.in    【立花奈央子 作品webサイト】https://www.crossdressjapan.com


≪ 社会が決めた「性別はかくあるべき」なんて、しゃらくさい。人は自由にありのままの自分を認め、謳歌できる ≫

2015年1月に開催された立花奈央子写真展「女装の軌跡と幸福論」の図録冒頭で彼女が語る言葉には、社会の一般常識や固定概念を跳ね除けて、自分らしく自由な生き方を求める姿勢が表われているように思います。子供の頃から社会によって押し付けられる常識に違和感を覚えていたという立花さんは、女装を愛好する人々と出会い、彼らの手探りで自分らしい性と幸福を模索する生き方に強い共感と感動を覚えたといいます。女装のスペシャリストとして活躍しながらも、写真やメイクの専門教育を受けた経験を持たず、一般の写真やメイクタジオで現場に携わった経験もほとんど無いという彼女の生き方は、一般的な世間のやり方に自分を合わせるのではなくて、自分らしい方法を一から手さぐりで求めるスタイルを一貫しているのかもしれません。

経営のための実務経験も持たないまま起業した彼女が、共感を抱く女装のユーザーとの間にビジネスを築いて今年で6年目になります。彼女が手探りで創り出したであろう、事業のスタイルはどのようなものなのか。現状の業務体系から今後の展望も含め、立花奈央子のスタイルとお考えについて、直接お話を伺いました。


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– -立花さんが代表を務める「フォトスタジオ大羊堂」では、「女装」に特化したサービスを提供されていますね。男性に女装のメイクをして、撮影をし、レタッチで補正した写真をお渡しする。というのが主なサービス内容かと思います。お客さまとしては、どのような方がおみえになりますか?。

立花さん(以下略称):色々な方がおみえになりますよ(笑)たとえば全く女装したことはないけど、とりあえずやってみたいっていうコスプレ感覚の若い子から、女装歴50年のベテランまで、経験値は幅広いですね。求められる方向もバラバラで、本当の女の子みたいになりたい人から宴会の余興程度で満足な人、女装したうえで性的なプレイがしたい人など様々です。ただ、女装の根底に流れているものは「女の子の時間」を楽しむことなので、今ここに自分が女の子として存在して、周りからも認められているという経験やストーリーを提供することが重要なんです。だから、メイクは基礎化粧品から全て女性用を使い、お洋服も男性向けの女装グッズではなくて、センスの良い女性物だけを置いています。皆さん、女の子のモノが使いたいんですね。

女装経験のあまりないお客さんの場合は、自分がどういう女の子になりたいか分からなくて、とにかく「女装をしたい!」っていうお気持ち先行で来られる場合もあります。こちらに「お任せ」の時は、女装コーディネーターの腕の見せ所です。私からご提案した女性像を気に入っていただき、リピートされるお方も多いですし、何度か体験する中で、自分らしい女装を発見される方もいらっしゃいます。

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– -難しい要望や、セクシャリティなどの繊細な領域に踏み込む場合もあるかと思います。お客さんとの距離の取り方はどのようにコントロールしていますか?

例えば、お客さんの体には基本的に手を触れません。また、お客さんがセクシャルなものを要求してくる場合は突っぱねます。あと、スタジオ業務に直接関係のない相談メールには返信しません。あくまでも業務の範囲内で、カウンセリングとしての相談には対応します。関わりの中で依存が生まれやすいので、自分を理解してくれると思うと延々とプライベートな相談メールを送ってくる方もおられます。そういう場合は、カウンセリング料をいただいて、お仕事として対応させていただきます。

– -お客さまへの宣伝・広告や集客は、どのようにされていますか?

立花:女装の業界って、意外と口コミで広がることが少ないんですよ。オープンにされていない方が多いからだと思うんですが、かといって広告や道端の看板でお客さんが来るものでもありません。とにかく皆さん「女装_撮影」とかで検索して来る業界です。最近はうちのホームページもリニューアルして、Webからくるお客さんに以前よりもタイムリーなイベント告知を打てるようになりました。例えば、先日は大羊堂の撮影と衣装業者さんの商品を参加者に無料体験していただくイベントを、このスタジオで開催しました。どんなに優れた技術や商品も、体験して価値を理解していただかないとお客さんにはなってもらえません。近しい業者さんと協力しながら、一緒に私たちのお客さんを育てていくことができたら良いと思っています。

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– -お客さまに対してサービスを考える際に、特に気をつけていることはありますか?

立花:もともと趣味性の高い業界なので、魅力的なサービスであればいくら値段が高くても興味をもってもらえます。例えばSMスタジオでの緊縛撮影は、最低でも7~8万円からの世界です。決して安いサービスではありませんが、これまで希望された方の中で、予算の都合でここまでしか出せないとおっしゃったのは1人だけでした。だから価格帯や利益率よりも、ニーズを形にして提示することが大事なんだって思っています。

うちでも比較的新しい商品として、撮影した写真をプライベート写真集として装丁するサービスがあります。どんなにレタッチしたきれいな写真があっても、個人ホームページを持っている人でもなければ用途に限界があるじゃないですか。だから、女装体験を写真集として人に見せられる形式にしてあげることで、より広がりが持てるんじゃないかって思ったんです。女装をする人のほとんどが、自分の中の女の子のストーリーを写真集としてパッケージしようなんて思っていません。だから、こちらから提案してあげると、わー!もっと欲しい!ってなって、良い反応をいただきますね。

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– -開業する際に、ご自身のサービスが受け入れられる事をどの程度想像していましたか?

立花:開業当時は先のことは全然考えてなかったですが、私のやりたいサービスにニーズがあるって事はわかっていました。だから、絶対にお客さんは来てくれるって思ってたんです。女装は基本的に男性社会なので、女性がサービスを提供する所がそもそも少なかったですし、写真撮影に関しても、ちゃんとした照明機材を使ってやっている所はほとんど無かったと思います。マンションの一室でお化粧して、コンデジや携帯カメラで撮影して、それで写真展とかやっちゃう業界だったので。写真技術的にも、メイクの技術や女性としての感性の面でも、私のサービスが入る余地があったんだと思います。

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– -スタジオ経営以外でも、個展や写真集、写真雑誌で継続的に写真を発表されています。写真を作品として発表することは、立花さんの活動全体でどのような位置付けなのでしょうか?

立花:ここ数年は特に、女装をする人自身の人生に興味を持つようになりました。今年の個展でもドキュメンタリー的なものを多く展示したんです。日本では、女装の業界があるっていうことは皆さんご存じなんですけど、女装をする人の人間像って想像できないと思うんですよ。そこには多種多様な人たちがいて、いろんな人生があるんだよっていう事を、近くで見ることができて、尚且つ客観的に伝えることが出来るのは、多分、私だけなんだと思います。

客観的っていうのはつまり、自分が女として生まれて生活しているから、どんなに女装の業界と深く関わっていても、私は当事者ではないんです。女装の業界としては異端者なんですけど、異端だからこそ見せてもらえるものとか、冷静に撮れるものがあると思うんですね。だからこそ、私は仕事を通じて自分の目で見てきた、この女装の世界のことを、いろんな人に写真の発表を通して伝えたい。それによって、ちょっと世の中が変わったりとか、作品を見て何かしら感じた人に影響を与えられるだろうって思っています。

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インタビュー / 構成 : 渡邊 陽平

㈱スガタリサーチでマーケティングの業務に携わりながら、ファインアートの市場で絵描きとしても活動中

写真撮影 : 磯崎 威志 (Focus & Graph Studio

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