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世代別分析 固有の価値観の理解 前編:F1層 20-34歳 女性
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調査事例

世代別分析 固有の価値観の理解 前編:F1層 20-34歳 女性

2015/10/13
REPORT

世代別分析 固有の価値観の理解 前編:F1層 20-34歳 女性

前回の「世代別分析 年表編」においては、20代の女性たちが生きてきた年代のライフイベントを軸に、それらの出来事が彼女たちの考え方や意識の形成にどのように影響してきたかを考察した。

インターネットの普及と共に成長した彼女たち。産まれてから今日まで好景気を一度も経験せず、社会に出れば就職氷河期の真只中、という暗い経済状況の中でも、自分の価値を冷静に見つめてきた。【世代別分析 年表編 F1層 20-34歳 女性より】

 

では2015年現在、実際の彼女らはどのような考えを持ち、どのようなもの・事に魅力を感じているのだろうか。彼女たちのライフスタイルを大きく6つに分類し、前半の今回は①衣食住、②趣味・嗜好観、③交友観の3つに焦点を当て、彼女たちの実態を探ってみたいと思う。

①    衣食住

シングル女性のマンション購入が増加

ここ10年のうちに、マンション購入者の中で20-30代女性の数が増加している。中には入社わずか3年で購入に踏み切る女性もいるという。加えて、全世代の中で、一戸建てに対する魅力を最も感じていないことも大きな特徴である。(博報堂生活総合研究所「生活定点 2014年」より)かつて独身女性がマンション購入をすることは、結婚へのあきらめ、生涯独身への強い覚悟がイメージされた。しかし、近年その考え方は、よりフレキシブルなものへと変わってきている。ずっと独身であれば、生涯の大きな買い物を若いうちに済ませ安心でき、婚姻などにより状況が変わった場合には売却や賃貸の方法がある、といったポジティブな発想である。一戸建てよりもマンションを好む理由としては、補修・管理等の手間が掛からないこと、駅近くなど防犯面でも好条件で住める、などが挙がる。「自分だけの城」に加え、利便性を追及しての選択となったのだろう。

【住むなら一戸建てのほうが良いと思う】
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(博報堂 生活定点2014年より)
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彼女たちにとっては、何度も引越しを繰り返し、家賃を払い続けても手に入らない賃貸の不安定さよりも、自分のマンションを手に入れることによって得られる安心感の方が魅力的となるのだろう。

将来が不安な現代において確実な安定を手に入れたいという願いは、現実主義で安定志向な彼女らにとって自然な行動と言えるのではないか。

食(料理)は鉄板ネタ

青春期には友達と共通の趣味・嗜好を持つことで関係を確認し、自らを安心させていた彼女たち。大人になった彼女たちが、現在他者との関係を確認するために用いているのがTwitterやFacebook等のSNSではないだろうか。中でもこの世代で特徴的なのが料理の写真投稿で、20代女性の約30%は料理の写真を撮ってインターネットにアップロードした経験を持つ。(博報堂生活総合研究所「生活定点 2014年」より)彼女らの年代は結婚・出産を機に専業主婦となる人、社会でキャリアを築いていく人、などライフスタイルの変化が大きく分かれることが多い。そんな中で、趣味や興味の対象が異なってくるのはごく自然なことであり、昔と同じように共通の話題で盛り上がるのが難しくなる場合も多い。

そんな中でも、「食事」という万人に取って共通の事項である写真を投稿することは、相手の興味を引きやすい。自分が投稿したおいしそうな料理の写真に「いいね!」をもらう事で、共感欲求が満たされ、現在は異なる価値観を持つ友人とのつながりも確認できるのではないだろうか。

【料理の写真を撮ってインターネットで公開したことがある】
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(博報堂 生活定点2014年より)
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②    趣味・嗜好観

卒業旅行は頑張って行く海外よりも気軽な国内へ

学生生活最後の締めくくりとして大きなイベントである卒業旅行。大学生・短大生の卒業旅行といえば、最後は思い切って海外へ、というイメージがあるが、友人たちとの最後の思い出作りの行き先として、彼女らの多くが選んだのは意外にも国内であり、その数は海外派の約2倍であった。

ツアープランを選択する際に重視するポイントに関しても、「観光プラン」を抑えて「予算」が第一位に挙がる。

幼い頃から不況の中に育ち、堅実で高望みしない消費スタイルが根付いている彼女らにとっては、昔に比べて格段に行きやすくなった海外旅行であってもそのハードルは高い。憧れは抱きながらも、思い切り消費する事に対してどこか一歩踏みとどまってしまうのだろう。

国内旅行であれば、海外よりも少ない出費と日数で実現可能であり、事前の情報収集もたやすすい。言葉の壁や治安などの懸念もないため、彼女らには海外旅行のワクワク感・冒険感よりも、国内の安心感・お手軽さの方がより大きなメリットとなっていると思われる。

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(Brand Xing調査 さとり世代の卒業旅行事情より)

自分で決めるのは不安だから誰かの後押しが欲しい

他の年代にはない、20代女性固有の特徴として、占いやパワースポットなどのスピリチュアルなものを信じる人が圧倒的に多いことがある。(博報堂生活総合研究所「生活定点 2014年」より)「信じるものはなんですか?」という質問に対し、「占いやおみくじを信じる」と回答する人は、20代女性全体の45.7%に上った。学生時代とは違い、転職・結婚・出産など人生の大きなターニングポイントに立たされることが多い20代女性。不確定な時代に生まれ育った彼女らは、そのような大きな決断に悩んだとき、自分で答えを出す前に、見えない不思議な力の後押しを必要としているのではないだろうか。

また近年では、自治体が神社や地域資源をパワースポットとして売り込み、週末や大型連休には多くの女性客でにぎわうという動きが見られるようになった。現地では、友達同士でわいわいと神社にお参りする女性グループが見られるなど、ご利益以前に、「パワースポットに行く」という行為自体がイベント化している様子が伺える。加えて自ら現地に赴く事で、五感を使ってエネルギーをチャージできる‘体験型’であることが人気の理由であると思われる。

【占いやおみくじを信じる】
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(博報堂 生活定点2015年より)
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③    交友観

交友関係が広く、男女間の友情も成り立つ

社会人となり、まだ独身である人も多いため、新しく出会う人の数も多い。2013年の「リクルートブライダル総研 恋愛観意識調査」では、20代女性の36%以上は異性の友人が5人以上いると回答。他の世代を大きく引き離している。約半数の女性が男女の友情は成立する、と回答している。彼女らは幼い頃より男女平等を基本とする社会に育ったため性別で友人を選択する傾向が希薄である。30-40代の女性に比べ友人関係において、性差が障壁となる、という概念が薄いことを示すのではないだろうか。

【異性の友人の有無について】
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(リクルートブライダル総研 2014年)
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結婚観:結婚とは、家庭の共同経営

彼女らが理想とする夫婦観について、「友達のような夫婦関係が良い」と考えている人が他世代に比べ圧倒的に多い。(博報堂生活総合研究所「生活定点 2014年」より)彼女らがパートナーに求めるのは、いかに自分を尊重してくれ、安らぎや落ち着きを与えてくれるかというところだ。夫婦の関係性はどちらが上でもなくフラットであることが理想とされ、お互いの意見やライフスタイルを尊重している。中には、夫婦でありながら、家計も別にしている場合もあるという。

こうしてみると、「友達のような」とはかつて言われたような仲のよいほのぼのとした関係ではないような気がする。

彼女たちの世代は、女性も男性同様に仕事でのキャリアを築き、男性も同じ割合で家事や子育てを分担する事が当然というマインドで生きてきた。彼女らにとって夫婦関係とは、幸せな家庭という共通の目的を持ちながらも、いかに互いの異なった価値観を認め合い、妥協点を見出していくかという共同経営者的なものである。

【友達のような夫婦関係がよいと思う】
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(博報堂 生活定点2015年より)
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写真引用:https://nanapi.jp/115152

価値観の理解編後半となる次回は、職業観、メディア接触態度、自分の3つに焦点を当て、さらに彼女たちへアプローチするためのキーワードを予想してみる。

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