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【年代別分析】固有の価値観編 世代:ティーンズ(男女)
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調査事例

【年代別分析】固有の価値観編 世代:ティーンズ(男女)

2015/09/11
REPORT

 社会に出ていない社会人~Teensの実態に迫る~

1. 振り返りと目的

前回、10代の若者たちは、平成の大不況の中に誕生し、景気の上向き・社会への明るい兆しを実感できずに2015年まで生きてきた「明るい時代を知らない世代」であり、ソーシャルメディアの普及により、「いつでもどこでも誰とでもつながっている」状況が生まれたと述べた。交友範囲の広がりを見せる一方、24時間の中で1人の相手と付き合う時間は短くなったことから、関係性の希薄化が進んでいるようであると述べた。(【年代別分析】年表編 世代:ティーンズ(女性)参照) 彼らの両親はバブル時代に青春を過ごしたため、上昇志向が強く、親になった今もなお、子育てに対してのみに時間を割くのではなく、自己実現に向けて自分の時間をとることを怠らない。また、無理強いや怒鳴り叱り付けることを良しとしない世の中の風潮から、「ほめて育てる」育児法が推奨されたため、「叱られる」という場面が減った。風潮とは相反して、彼らの多くは、「ほめられる」よりも「叱られたい」という傾向が強まり始めているという。自分のやることをなんでも否定されずにいるため、果たして自分のことを本当に見てもらえているのかいなや、自分のしていることが果たして正しいのかというような不安を高めているためだと考えられる。(増える「叱られたい」若者 博報堂「若者研」より)
そのため、自分の存在を認めてくれる場所を増やすことで、このような状況から生じた不安を解消させる傾向にあるようだ。自分のアイデンティティを所属グループに依存するため、所属グループ内の雰囲気を良好に保つことに必死であると考えられる。
今回は、2015年現在の10代の若者の実態に迫り、彼らは何を見て、何を感じ、考え、何を選択し行動しているのかという点に焦点を当て、彼らの実態について考えていくことにした。

2. 結果

【勉強・職業観】

将来への不安を解消したいがためか、時間を費やすのは大学・就職に繋がる勉強

彼らは現在高校生または大学生の年代で、将来への不安を抱きながら育った。実際、景気がよくなりつつあっても、生まれたときからいつもそばにあった『不安』を払いきれず、54%の高校生は大学卒業の目標を持っている。(「中学生・高校生の生活と意識調査・2012」について NHK放送文化研究所)また、2008年の中学生・高校生と比べ、学校にいる時間も長くなり、宿題以外の勉強へ費やす時間と塾・予備校で過ごす時間も長くなっている。

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(放課後の生活時間調査 ベネッセ教育総合)

 

等身大に合った職場が理想

この世代は、将来への不安を日々抱えているからこそ常に自己満足できる仕事を求めているのではないかと推測する。

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2012年度、『魅力的な仕事』のキーワードとして上位に挙がった3つのうち2つ(安定と高収入)は将来への不安を直接的に解決してくれるものだ。残る1つのキーワードとして「自分の好きなことができる」が挙がったのは、普段の生活の中で幸せを感じ、満たされ続けたい意思の表れではないだろうか。1996年度のキーワードを見てみると、仕事上の付き合いに価値を感じ、自分の才能を活かすことで成長したい、さらに金銭面で余裕が欲しいという、いわゆる上昇志向を示すものが並んでいる。それらに対し、2012年度のキーワードから伝わってくるものは、現状維持ができれば十分満足だという気持ちである。

 

【趣味・メディア接触態度】

一人で完結でき、楽しむことができる趣味に人気が集中

10代~社会人に共通してはまっているものの上位は、音楽鑑賞、PCでのインターネット、アニメであり、いずれも一人で楽しめるコンテンツに人気が集中していた。スマートフォン・携帯でのインターネット使用が、19%と高いことは、高校生のみに見られる傾向であり、常につながっている状況がここから見て取れる。

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スマホからの動画視聴は8割であり、PCよりも高く、テレビに迫る勢い

スマホの利用は、高校入学とともに増加、8割超える。動画利用に関していえば、特に10代女性の場合は、動画サイトではなく、スマホを利用した動画視聴が多い。視聴の際は、SNS上での動画視聴の割合が高いようである。このことから、自ら見たい動画を検索して視聴するのではなく、人が評価した動画を視聴する傾向が高いことが伺える。動画視聴でスタンプやゲーム内アイテムに使うコインを貯められる「LINEフリーコイン」の利用率が30%を超える高さであるのも特徴であり、同年代の男性と比べて2倍高いようだ。(サイバーエージェント調べ)

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どの年代・層においてもLINE、Twitter、Facebookにアカウント登録をしている。女性においては、Instagramの登録率が高く、特に女子高校生では2人に1人がアカウントを持っているという。
全体を通じて、LINEを投稿目的、FacebookやTwitterは見る目的で最も多く利用している。高校生においては、LINEの投稿回数が他の年代に比べて、1日平均25回と非常に高い。

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女子高校生の今しかできないと思う趣味や好きなことは、みんなと共感しあえる安価で日々楽しめるもの

高校生~社会人の男女ともにファッションに興味関心が高く、女子の場合は、美容やメイク、男子の場合はゲームに人気が集中した。女子高校生の場合は、セルフィのように、SNSに投稿することで、人からの共感や反応が得られる趣味や、コスプレのように仲間ときずなを確認し合える趣味に人気が集中している。どの趣味も仲間からの共感が得られやすいことが重視されている。また、これらの趣味は1回あたりの単価が安く、日常的に気軽に楽しめるものに人気が集中した。男性では年代おける趣味にほとんど変化はなく、その全てが家で楽しむことのできる趣味に人気が集中していた。

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【交友観】

ノリ合える空気感を作るために、空気を読む

10代の若者にとって、自分のアイデンティティを守るためには空気を読むだけでは不十分という考えが強まっている。従来の既に出来上がった空気感に同調することに加えて、みんなでノリ合える空気が、みんなの参加によって生み出される(=シナジー)を重視し、場を盛り上げる方に付こうとする傾向があるという。これは、オフラインのみならず、オンライン上のコミュニケーションでも暗黙のルールになっているようだ。(電通総研 若者問題研究所)

八方美人になるために、アカウントを使い分け

ソーシャルメディアの普及により、自分の私生活が可視化され、人の目に触れ評価される機会が生まれている。そのような中、10代の若者の中では、Twitterに複数のアカウントを作成し、利用することが増えているようだ。

親しくない人に知らせるカモフラージュアカウントを作成
自分の気の置けない友人には、メインアカウントを教える一方で、知り合ったばかりの人や微妙な距離感にある友人など、自分のメインアカウントをあまり知られたくない人に対して「捨てアカウント」としてカモフラージュアカウントを教えるという。メインアカウントにおいてはプライベートなことやプチ日記のようなことをつぶやく一方で、カモフラージュアカウントでは当たり障りのない無い内容をつぶやくという。メインアカウントでは頻繁につぶやく一方で、カモフラージュアカウントではつぶやく回数は少なく、開く回数も少ない人もいるという。

2人でひとつの共有アカウントを作成
悩みや思いを文章にすることで自分の中で、頭や心を整理したい。そして誰かに知ってほしいという意図から、気の置けない友人との共有アカウントを作成することもあるという。理由は2つある。1つは、メインアカウントでこのようなことを書き込むと、200人近くいるフォロワー全員に知られて困るし、そのような心情までは見られたくないという微妙な気持ちがあるから。もうひとつは、LINEの場合、既読機能があるために相手に返事を催促しているようなプレッシャーを与えかねないため、罪悪感があるから。TwitterはLineでは満たされないニーズをツイッターが吸収しているようだ。

趣味でのアカウントを作成
メインアカウントに自分の趣味の呟きばかりをかけば、その趣味に興味のないフォロワーから「ウザい」と思われるリスクがある。そのため、共通の趣味を持つ人とのみつながるための「趣味専用アカウント」を作成する。このアカウントでは、ハッシュタグを利用し、フォロワーを増やして多くの人と交流するという。ハッシュタグによって他人のツイートを検索することができるので、この機能を使って同じ趣味を持つ人同士がつながっている。オンラインのみの付き合いに留まらず、一緒にコンサートやイベントへ参加したり、オフ会を開催したりとオンラインの付き合いにも発展しているようである。
イタい人になることを避けるために、人間関係に細心の注意を払いつつ、それでも趣味の活動を充実させたり、本音をこぼせるといった自分の欲望や願望に対して、素直になれる環境を作るために複数のアカウントを作成しているといえるのではないだろうか。(東洋経済ONLINE)このような気遣いは、社交の場である「カラオケ」にも見られている。

空気を読むことがトッププライオリティ

増加する歌謡曲女子

現在は音楽ジャンルが多様化し、カラオケの機械でもそれを反映して、歌える曲数が増えた。曲が増えた分、最近発売されている曲は、みんなが知っているとも限らなくなった。みんなにとって興味の無い歌や知らない歌を歌えば、即座に視線は手元のスマホに移り、歌い手に関心が向けられなくなってしまう。それを避けるために、みんながテレビ等で聞きなじみがあり、知名度が高い「昭和のヒットソング」を選曲する女子が増え、彼女らを「歌謡曲女子」と呼ぶという。彼女らは、山口百恵、松田聖子、ピンクレディーを十八番にして、振り付けまで覚えて歌うという。

マイクを回して歌う現象

全員が知っている曲なのに、自分ひとりだけで歌いきるのは「自分勝手」「わがまま」だと思われるのではないかと思い、1番・2番・3番とマイクを回しあいながら1曲を歌いきる人もいるようだ。

カラオケの途中で演奏を中止させる

最後まで歌いきってしまうと時間を一人占めしてしまい、他の人が歌う時間を奪ってしまい、申し訳ないと感じるようだ。SNSの普及や所属するコミュニティの多様化によって、昔を比べて他人と接する機会が増えた分、1つのコミュニティに対して費やせる時間はそう長くはない。いざ、カラオケに行くとなれば、自分にとっても友人にとっても貴重な時間を割いているわけであるので、その時間を有効活用して、なるべく多くの曲を歌いたいという共通認識が生まれているようである。

思う存分好きな歌を歌える「縛りカラオケ」

このように普段から周囲に気を遣っている彼らだが、その反動も現れている。それが、「縛りカラオケ」である。
「縛りカラオケ」とは、ひとつのテーマに限定して、その曲を歌いたい人だけが集まってカラオケに行くというものである。上記のように思う存分、自分の好きな曲を歌えない環境があるため、空気を読む必要のない、趣味の合う人同士でセッティングされる「縛りカラオケ」は近年増加傾向にあるという。一人でカラオケにいく「ヒトカラ」も同様のニーズから生まれたと考えられる。(東洋経済ONLINE)

 

外では気を使う必要があって疲れるから、落ち着けるのは実家

生まれたときから不況のなか、両親は自分を守ってくれた存在。いろいろあった過去を経て高校生・大学生になった若者と彼らの両親との間には強い絆ができているのではないだろうか。さらに、ネット上や周りの同世代には常に合わせるプレッシャーがあることと対照に、家では圧迫感もなく、ありのままの自分でいられる。高校生に聞いてみたところ、両親どちらとも「自分に対して優しくあたたかい」、「自分のことをよく分かっている」と感じている者が多い。

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特に母親は父親との関係と比べ、話す頻度も高く、情報交換をすることも多い。また、他の世代で見受けられた親からの、『勉強をし、良い成績をとる』というようなプレッシャーもあまり感じていないようだ。
結果として、teensの悩みの相談相手もかわってきているのではないだろうか。現在の高校生の悩み事として上位にあがるのは「将来のこと」(60.9%)や「成績、受験」(54.4%)で、これらの相談相手は以下の通りだ。

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相談相手として、友達の次に母親が人気を集めている。過去30年からの変化をみていくと少しずつ友達に相談する者が減り、母親に相談する者が増えているようだ。なお、父母どちらとも仲がよくても、悩みを相談する面では父親より母親のほうを選ぶケースが多いようだ。(「中学生・高校生の生活と意識調査・2012」について NHK放送文化研究所)
親と大変仲がよく、場所を選ばずSNSで繋がっていられることに慣れているこの年代にとっては、毎日の生活を送っている家族のいる実家で十分幸せを感じ、憩いの場として過ごしているのかもしれない。
また、大学生になっても実家通いの者が年々増えている。これは、学費の上昇の中、両親と仲がよく、通勤時間も一人暮らしをする場合とあまり変わらないという現状から、実家から通ってもいいという考えが増えているからではないだろうか。生活費だけでも、下宿含む通学者と自宅から通う者の差は51万円と、自宅通いと下宿通いの生活費の違いはかなりのものだ。

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今回は、Teensの固有の価値観と生態を分析してみた。次回では、年代の背景とあわせて現在のTeensへアプローチする際に有効なキーワードを予想してみる。

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