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【2015年のトレンド予測】~インバウンドビジネスの成長~今後、日本経済を支えるのに重要な存在となる訪日観光客。彼...
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調査事例

【2015年のトレンド予測】~インバウンドビジネスの成長~今後、日本経済を支えるのに重要な存在となる訪日観光客。彼らが求める日本とは?!

2015/02/27
REPORT

最近、「インバウンド」という言葉をよく耳にするようになったと思うが、特に昨年頃から注目されている分野である。周囲でも、「外国人が増えた」という話題がよくあがり、銀座や新宿には中国人をはじめとする外国人観光客が増えたことを肌で感じている人も多いと思う。日経MJで発表された2014年のヒット商品番付では、西の横綱(西日本No.1)は「妖怪ウォッチ」と誰しもが納得するような商品が選ばれたのに対し、東の横綱は、(東日本のNO.1)「インバウンド消費」と意外なものが選ばれた。また、日経MJには2015年に入ってから「つかむインバウンド消費」という題で既に4回も「インバウンド消費」について掲載されている。このように「インバウンド」は、近年注目されているビジネスであり、今後さらに成長していくことが期待されているであろう。※「インバウンド消費」とは、「海外から来日した外国人の日本での消費」のことを意味する。
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日本政府観光局は、2014年に日本を訪れた外国人数が前年比29.4%増の1341万3600人だったと発表している。円安で日本への旅行が割安となったほか、東南アジアの訪日ビザ緩和、2014年10月からの消費税の免税対象拡大を追い風に、2年連続で過去最多を更新した。訪日外国人数は13年に1036万3904人と初めて1000万人を突破。12年からの2年間で500万人強も増えた。

では、なぜ、今インバウンド市場に注目が集まるのだろうか。大きな理由として、少子高齢化に伴う日本の人口減少が挙げられる。2045年頃には日本の人口は1億人を切るという予測もあり、内需が減少していくのも当然のことである。そのような状況の中で、日本企業はもはや訪日外国人の消費を頼らざるを得ない状況となっている。加えて、上述の円安・訪日ビザ緩和・免税対象拡大といった訪日外国人にとって好条件が重なり合い、今、インバウンドビジネスが拡大しているのである。




以下は、日本の産業別規模であるが、観光は金融・土木などと肩を並べる20兆円規模の基幹産業であり、このうち外国人観光客の消費額は2兆円に達している。

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参照:https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/205113.html

また訪日観光客一人あたりの、宿泊代・買い物代・飲食代を含む消費金額は、日本人の国内旅行者の3倍であり、消費のインパクトは大きい。特に、外国人に人気の新宿や銀座などで買い物の消費が活発になってきており、小売やホテルなど幅広い業界に恩恵をもたらしている。中でも、中国人の消費額はけた違いと言われており、一人当たりの支出総額は23万円と平均より8万円も高い。外国人観光客一人あたりの平均消費額は15万円前後といわれており、10人集客することによって日本人一人あたりの年間の個人消費額(モノやサービスに対する消費額)に匹敵することになる。訪日客の消費は日本経済に大きな影響を与えており、日本の人口が減少していく中で、もはや訪日観光客は日本の経済を底上げしてくれる重要な存在なのである。

このような状況の下、日本政府観光局や観光庁などの政府機関は、2020年の東京五輪開催に向けて訪日観光客2000万人という目標達成のために、「ビジットジャパンキャンペーン」や「クールジャパン」などのPR活動を積極的に行っているが、旅行会社などの民間企業、地方の自治体、旅館、小売業なども、訪日客へのPR活動は様々な分野で活発に行われている。

訪日客にとってかつての人気スポットは、ゴールデンルート呼ばれる東京・京都・大阪であったが、このような観光スポットというのは一度訪れてしまえばそれなりの満足感を得てしまうのである。2020年に2000万人という目標を達成するためにはもはやゴールデンルートのような定番化された観光スポットだけではなく、新たな価値を提供していかなければならない。実際に、訪日客は日本人が見向きもしなかった商品やサービスに価値を発見し、消費の裾野を広げている。

訪日客が「発掘」した新スポットは、外国人視点からみた日本のユニークさに着目したものばかりである。

観光農園ドラゴンファームイチゴ狩りがタイ人に人気で昨シーズンは2400人が訪問3
佐賀、タイのドラマ・映画のロケ地昨年公開の「タイムライン」などがタイ人の間で人気4
仏像専門店「イSム表参道店」香港やタイなどを中心に10万円前後の仏像が売れ筋5
カオサンワールド浅草ラブホをリノベーションしたゲストハウス。外国人客が9割を占める6
カプセルホテルグリーンプラザ 新宿での昨年の外国人客数は、一昨年の2倍となった。 7
ゴールデン街 昔ながらの日本を体験することができる、日本の居酒屋料理が楽しめるフレンドリーな場所として人気8
ロボットレストラン ロボットが踊り、戦うパフォーマンスどこの国でも見られない日本ならではの新たな観光スポット。9
 株式会社美ら地球(ちゅらぼし) 飛騨古川の里山をサイクリングや徒歩で回るツアー。欧米を中心とした個人客の利用が多い10

これらのスポットのいくつかは、日本人にはその良さが気づかれずにこれまで注目されてこなかった場所であるが、映画のロケ地で有名になったり、タイの王族が訪問したことなどがきっかけで口コミで広まるなど、訪日客が発掘したスポットである。

例えば、近年、外国人観光客の間で注目されているのが、新宿歌舞伎町にある「ロボットレストラン」である。巨大ロボットや小型ロボットと30名ほどの女性ダンサーが登場し、ダンサーが和太鼓を打ち鳴らしたり、戦車や戦闘機に乗ってロボットと一緒にダンスパフォーマンスを繰り広げるのである。日本人にとっては、なかなかその魅力は理解し難いかもしれないが、歌舞伎町という日本一の歓楽街のイメージにマッチした猥雑でパワフルなショーが、欧米人の心を掴んだのである。どこの国でも見られない珍しさやロボット先進国である日本の技術を活かしたユニークなエンターテイメントが、新たな観光スポットになったのである。2012年7月のオープン当初は、ロボット好きの30-40代の日本人男性をターゲットにする予定だったそうだが、海外メディアが日本メディアよりもいち早く目を付けて取材に来るなど海外観光客の間で人気が広まった。特に海外向けのプロモーションは行わずに、トリップアドバイザーやフェイスブックなどの口コミだけで拡散し、昨年は、トリップアドバイザーの外国人に人気の観光スポットとして16位に選ばれた。上位に選ばれたのは、伏見稲荷大社、厳島神社、金閣寺、東大寺、平和記念公園資料館といったいわゆる伝統的なスポットの中に、新しいエンターテイメントが選ばれたのである。

YOUTUBE https://www.youtube.com/watch?v=TavXIlVc2sA
カオサンワールド浅草は、国内4都市でチェーン展開しているゲストハウスである。ゲストハウスいうと、お金のない若者が利用する安宿で、決して清潔ではないイメージを持つ人が多いが、カオサンは実に清潔で、必要な設備が充実しており、スタッフもフレンドリーだそうである。その上、他の旅行客とのコミュニケーションの場を設けるようなスペースを確保するなどの工夫がされている。カオサンは、単なるバックパッカー層をターゲットにするのではなく、フラッシュパッカー層と呼ばれる節約だけではなく自分のこだわる部分にお金を使う旅行者の取り込みに注力しているのである。それは、もはや訪日客がパッケージツアーで行くゴールデンルートには飽きており、特別な体験を求めていることにカオサンは気づいているからである。
カオサンには、特別な体験を求める訪日客が宿泊することが多い。というもの、このゲストハウスは、1980年代に作られたラブホテルを改装したホステルなのである。部屋のタイプは、個人部屋、ドミトリー型、ファミリールームなどがあり、ドミトリーなら1泊2000円~、ファミリールームも4人一部屋で12000円とリーズナブルな価格設定である。

ドミトリールーム。
ドミトリールーム
ファミリールーム。空模様の壁紙があった部分は、以前は浴室だったという
ファミリールーム。空模様の壁紙があった部分は、以前は浴室だったという

客室の20%は、ジャグジーやベッドサイドのコントローラの照明、鏡張りの壁といったラブホテルのお楽しみ要素をそのままの形で残し、海外からやってくる好奇心旺盛のカップル向けに提供している。

カップル向けルーム
カップル向けルーム
意味深な絵ガラス
意味深な絵ガラス

この建物は、バブル時代に莫大なお金がつぎこまれた日本有数のラブホテルだったが、これを二度と作れない日本特有の文化財として、できるだけ原型を残した上で、世界のホステルトレンドを押さえつつ先取りした改装を施した。これには、日本人だけではなく海外からの利用者に大好評だったようである。ロンドンでは、日本特有の文化として描いた映画『Love hotel』も上映され、テレグラフ紙ではラブホテルのコンセプトに対する賛辞の声が多数寄せられている。

インバウンド消費が、今後さらに注目されていくことは間違いないが、定番な体験・商品に満足しない訪日客にどう対応するかが成功の分かれ目になると考える。そのためには、日本でしか味わえない特別でユニークな体験をしたいという外国人の目線に立って、日本の文化を再評価し、体験・商品をプロデュースしていく視点が欠かせない。日本人が知らない日本らしいものを発掘し、外国人の心を掴んだものがインバウンド消費をリードしていくのであろう。

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