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「かけ×ちゃいましたがそれってアリなの?ナシなの?」~“アタリ(成功)組”の体験レポート
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調査事例

「かけ×ちゃいましたがそれってアリなの?ナシなの?」~“アタリ(成功)組”の体験レポート

2014/11/07
REPORT

意外な組み合わせにおけるアタリ組とハズレ組の特徴を2回に渡って紹介しているが、特にノンアルコールビールのような『脱構築型』製品を“アタリ組”の代表として注目してきた。ノンアルコールビールが成功したのは、健康志向などの時代背景に沿っていることやビールと同じEmotional Benefitを伝えることに成功したという分析はされてきた。今回は、アタリ組の製品を実際に体験することでその成功の理由を探り、前回までに明らかにされていなかったアタリとハズレの分岐点をより明確にさせたい。

アタリ組として、先日、お台場にあるダイバーシティーの屋上の『都会の農園バーベキューテラス』にいってきた。バーベキューといえば本来であれば都会から離れた田舎などの自然の中で行う非日常的な体験とされてきた。つまり、自然×バーベキュー=特別な体験というものだったが、“自然”を“都会”に置き換え、都会×バーベキューとした時に、得られるものは何なのかと疑問が生まれた。その意外な組み合わせがアタリとなった理由を探るために今回、都会のバーベキューを体験してきた。

都会のバーベキューは、『都会の農園バーベキューテラス』の他に、『ワイルドマジック』というキャンプサイトも有名である。どちらかというと『ワイルドマジック』のほうが、都会で体験できるキャンプ・バーベキューとして規模が大きく、アウトドアの本格度も高い。これらは2012年の夏に、豊洲やお台場の埋立地などを利用してできた都会型エンターテイメントパークである。

それぞれの施設を簡単に紹介すると、ワイルドマジックは、スカイツリーや東京タワーを望む1.6ヘクタール(16,000㎡)の敷地内に、こだわりのあるビンテージデザインのコンテナ建築やテントが備え付けられており、本場アメリカンスタイルのプレミアムBAR-BE-CUEを気軽にオシャレに楽しめる。また、テントやバーベキューの食材や機材はレンタルすることができるので、手ぶらで行くことができる。https://wildmagic.jp/

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都会の農園バーベキューテラスは、お台場のダイバーシティーのような都会の大型ショッピングモールの屋上に作られたバーベキュー会場である。こちらもワイルドマジック同様に、食材や機材はレンタルできる。あるいは、食材や飲み物は持参し、機材だけのレンタルというのも可能である。https://digiq.jp/diver/

今回、体験してきた内容は以下である。

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①    13時半に恵比寿駅集合。食材は現地で購入しても良いが、現地購入は割高なことと食材が限られているので恵比寿駅のピーコックで買うことにした。従来のBBQと違い、都会のど真ん中で集合して買い物をするということに不思議な感じがした。

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②    バーベキュー会場の最寄り駅までの移動。買出しした肉や野菜の袋を片手に、山手線とりんかい線を乗り継ぎ東京テレポート駅まで向かった。スーパーの袋を片手に電車に乗った時の気分は、これからBBQをするという心構えより、食料品の買い物を終えて、家で鍋をする時のような日常の何気ない楽しさに近い気分だった。

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③    最寄り駅~会場到着まで。フジテレビの本社を右手に見ながら、ショッピングモールのエスカレーターを昇って会場へと向かう。ここでもまだBBQをする実感は沸かず、お台場に観光に来ている外国人に混じって自分たちもショッピングを楽しむような気分であった。

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④    会場到着。ようやく会場に到着し、BBQ会場へ入場するため受付を済ませる。2000円の入場料を支払うと連れて行かれたのは、フジテレビ本社ビルをバックに、20組ほどのBBQブースが並べられた何とも都会的な雰囲気の会場であった。

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そこに用意されていたものは、既に炭に火がついたBBQコンロに、塩コショウなどの調味料、トング、紙皿、割り箸など、本当に自分たちで持参した食料品以外のものは不要であった。さらに、飲み放題メニューが用意されているなど、まるで屋上ビアガーデンに近い気もした。

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⑤    BBQ開始。スーパーで購入した具材をカットし、BBQの準備を始めていくとようやくBBQをしている気分になってきた。もちろん包丁やまな板も貸してくれ、近くには水道があるなど、従来のBBQにはない便利さを感じた。確かにデパートの屋上ビアガーデンに近い感覚といえばそうかもしれないが、自分たちで材料を切ったり焼いたりする時の気持ちは、自然の中でするBBQと同じようなワクワク感があった。さらに、フジテレビやレインボーブリッジの都会的な空間に囲まれ、そよ風に吹かれながらするBBQは、屋内のレストランでは味わえない開放感や新鮮さを感じることができた。

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この体験を通して発見できたことは、屋上ビアガーデンでもない、本格的な自然の中のBBQでもない、手軽にできるBBQのワクワク感という新しい価値であった。この『手軽さ』は、都会のBBQのならではの特徴として重要な要素である。

脱構築型製品の定義に従っていうのであれば、従来のバーベキューの『自然』や『非日常体験』という中核価値をそぎ落とし、『都会』や『手軽さ』が付加価値として置き換えられたのである。

しかし、ここで言いたいのは、単に『自然』や『非日常の体験』という物質的なハード面としての価値がそぎ落とされただけで、『ワクワク感』や『仲間との時間の共有』というエモーショナルなソフト面としての価値がそぎ落とされたわけではないのである。

過去30年の間、時代は『モノからコトへ』とシフトしたが、現代はさらにそれが進化し『モノからコトへ。そして体験へ』と変化した。モノが溢れるこの世の中で、人々のモノに対しての消費欲求は低下し、コトに対してお金を払うになった。そして、さらに体験を通して得られる「心の豊かさ」等のという「価値」を見出すようになった。心の豊かさという価値を与えてくれるのは、モノではなく、新しい「体験」なのである。例えば、自動車という製品においても、消費者は自動車という製品を購入しているが、それは一家団欒の思い出を作るための体験の購入であり、「家族の幸せ」という価値を購入しているのである。

都会のバーベキューは、『自然』というハード面が都会に置き換わったため、BBQの雰囲気が一見ガラッと変わってしまったかのように見えるが、友人や家族との楽しい時間を共有することや、心を開放的・豊かにしてくれるサービスというソフト面においては従来のBBQと変わらないのである。

つまり、モノレベルにおいての中核価値は別のハードで置き換えることは可能だが、ソフトレベルでの中核価値をそぎ落としたり、置き換えてしまうことは、その製品・サービス自体の「体験価値」を失うことになるのである。例えば、自然の中であろうが都会であろうが、一人で高級ステーキを焼いて食べても、心が満たされず、何の満足感も得られないのである。そこには、楽しい時間・仲間との共有から得られる体験が欠落しているからである。

BBQの醍醐味である仲間との時間の共有や開放的な空間という体験が真の中核価値であり、それが消費者の感情に訴え、深く印象に残るのである。

ノンアルコールビールが成功した理由として、アルコールというハード面(モノ)での中核価値はそぎ落とされ味などでカバーされたが、家族や仲間との団欒というソフト面(体験)での中核価値は引き継がれたからである。

失敗例として挙げられたアイボだが、独り暮らしの人口が増加する中で、寂しさを癒す便利なペットとして開発された。本来ペットとは、感情が互いにシェアされるからこそ癒しが生まれるのである。しかし、アイボというロボットは、ペットと同じような動きが表現できたとしても、感情をシェアして心を癒すというコトが欠落していたのである。犬がロボット犬へと置き換わることが失敗というより、感情に訴えかける非常に大切なコトを削ぎ落としてしまったことが失敗に繋がったと考える。

このように、製品や体験が成功するか失敗するかにおいては、ハード面を訴えるのではなく、ソフト面の中核価値を継続し、それをメッセージすることが鍵となってくる。

都会のBBQは、『手軽さ』や『オシャレなロケーション、建物』というハード面が加わることで、見た目としては別のものとして生まれ変わったが、BBQの本来の価値である仲間と体験を共有することなどソフト面が引き継がれたため、手軽なBBQとして都会人に受け入れられるようになったのであると考える。意外な組み合わせは、組み合わせがユニークなため表面的には意外に見えるが、真の中核価値は本来のものと変わっていないのである。

次回の最終章では、これまでの意外な組み合わせの傾向、アタリ組とハズレ組の分析のまとめとして締めくくる。

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