2014年師走の時期。気がつけば私の体重も10キロ増し、着ているコートもボタンが全て閉まらなくなってきている状況だ。来年2月に出産を控えたプレママの私にとって、2014年は、心と体が変化していくにつれ、注目するトレンド、社会の動向などの視点も、今までとは大きく変化した1年であった。
そこで、今回の投稿では2014年を振り返り、ベビー・マタニティ市場の動向について、プレママ視点で、考察したいと思う。
2014年といえば、先日今年の漢字で選ばれた「税」を象徴するように、4月に消費税が8%に引き上げられた事により、消費者の財布の紐は締められている傾向であると言えるだろう。
そんな中、ベビー・マタニティ市場においては、「高機能・高価格」の製品が伸び盛りの傾向にあるという。実際に私も、プレママとして始めてベビー・マタニティ製品を手にして、あらゆる製品の価格帯に驚いた。妊娠腺を気にして購入した、専用クリーム8,000円。考慮中の抱っこ紐の価格が20,000円、そしてベビーカーに関しては、平均相場が50,000円。生まれてくる赤ちゃんの為に、いい物を使わせてあげたいという気持ちからか、普段財布の紐は決してゆるくない私にとっては、驚くべき購買意識の変化であった。
12月10日の日系MJで、「ベビーカー伸び盛り」という記事があった。主なベビーカーメーカーでは、今年に入り、赤ちゃんにとって快適さを与える、新たな高機能製品を発表している。その機能には、道路の段差を乗り越える際の衝撃を軽くする新製品、高反発マットレスパッドの素材を背面や座面に使用した製品など、どれも赤ちゃんにとっての快適さを追求している。価格に関しても、今年発表された新製品は、5万2千円から、最上位品の8万円台まで、高価格製品が目立つ。
ベビーカーの2013年の市場規模は約130億円で、この数年は横ばいが続いている。少子化による利用者の減少、景気低迷、増税による消費活動の低下、子育て支援の不足問題等の沢山の向かい風もある中で、何故ベビー・マタニティ市場において、高価格帯製品に勢いがあるのだろうか。
高価格帯製品の好調の裏側には、出産の高齢化、共働き世代の増加、そして「一生涯でひとりの子供を生む」時代の傾向により、ベビー・マタニティ製品は、“消耗品”ではなく、一生に一度の“記念品”のような位置づけとして意識しているママ、プレママが多いのではないだろうか。
“高機能・高価格”などで、一見華やかな印象を見せている好調なベビー・マタニティ市場とは別に、マジョリティのママは、子育てと、仕事、家事等の両立に日々奮闘しており、実態は違うのではないかとも考える。
思い返せば2013年12月、リクルートホールディングが、ベビー&マタニティ領域における2014年のトレンドキーワード予測は、「ヨザル夫婦」を発表していた。
ヨザル 画像提供:日本モンキーセンター
「ヨザル夫婦」とは、共働き夫婦が家事や育児を分かち合い、チームで子育てする夫婦の姿にフォーカスしている。授乳は母親、抱っこや毛づくろいは父親が担当する“ヨザル”にちなんで、命名されている。2010年に流行語大賞を取った“イクメン”はあくまでも「お手伝い」感覚で育児を手伝うパパを示す言葉であったが、2014年は、夫婦が同じ立場で、共に主体的に育児をする時代と予測していた。
Source:リクルートホールディングス”2014年のトレンドキーワード発表“
https://www.recruit.jp/news_data/release/pdf/20131210_10.pdf
しかしながら、2014年も師走になり、夫婦が育児においてフィフティ・フィフティである事を表現する「ヨザル夫婦」は定着しなかったのが現実のようだ。
先日注目を浴びた、グループウェア「サイボウズOffice」シリーズなどを提供している「サイボウズ」が製作した、“働くママのワークスタイルを描いたムービー”がある。働くママが直面しているあらゆる悩みや壁、心の叫びをありのままに描いている内容になっている。沢山のメディアにも取り上げられ、働くママにとっては、描写がありのまま過ぎて、見ているだけで涙ボロボロと、ネットを中心に広がりを見せているようだ。実際に私も見たが、1年後の自分の姿を見ているようで、とても共感できるものであった。
Source:サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」https://cybozu.co.jp/company/workstyle/mama/
このムービーで注目したいのは、ストーリーの中に“父親”の存在が見えないという事である。共働き世帯の割合が半数を超えた今、働く女性にとって、育児において男性とフィフティ・フィフティである事は、現実的に不可能ではないか?と実感している事を反映しているのが、このムービーであると思ってならない。
「ヨザル夫婦」の夫婦像は、あくまでも夢物語だったのかもしれない。現実には、母親側の子育て、社会における負担が大きいのは、覆されない事実なのである。そんな中、先日リクルートホールディングスから、2015年のトレンドキーワードが発表された。キーワードは下記の通りだが、内容は、母親主体の子育てにおける、ポジティブなワードがいくつもあげられていた。
・保けいこ - フルタイム共働き世帯の「おけいこ」を可能にする新しいサービスの登場
フルタイム・共働き世帯にとって、就業しながら平日のおけいこに通わせるのは難しく、土日におけいこが集中すると週末の家族の時間がなくなってしまうという現状がある事への打開策のサービス
・ママ喜業 - 子育て中の母親が起業すること
「ママ喜業」の目的はたくさんのお金を稼ぐことではなく、自分の経験を次のママ世代に活かすことで、双方のママが子育てを喜ぶ状態を生み出すことも特徴である
・ロンキャリ女子 - 結婚や出産をしても長く働きたいと思う女子高生
現在の高校生の親世代の「仕事か家庭か」(=ORキャリア)の選択ではなく、「仕事も家庭も」(=ANDキャリア)充実させたいという前向きな志向である
これら2015年のトレンドキーワードから共通して見えてくるのは、「家庭と仕事の両立がとても困難である事」を前提に、“それでも前向き”に、“自分らしく”生きていこう、育てていこうという、女性の居直りとも言える意識である。2014年のトレンドキーワードで上げられた「ヨザル夫婦」における、男女平等の立場、子育ての分担、意識とはとても対照的である。
2014年は、全てのママが、一向に改善されない子育て環境に対して、開き直りを始めた最初の年であったと言えるのではないだろうか。