COLUMN
平場化の波が百貨店の顔である一階化粧品売り場にも?
ホームSUGATAコラムREPORT平場化の波が百貨店の顔である一階化粧品売り場にも?

調査事例

平場化の波が百貨店の顔である一階化粧品売り場にも?

2013/09/27
REPORT

従来の百貨店での化粧品の販売といえば、ブランドごとに仕切られたブースにBA(化粧部員 beauty adviser)がいて、カウンセリングを受けながら商品を購入するというプロセスが一般的である。対面式の一対一の丁寧なカウンセリングとブランドで買い物をする、ということで顧客を喜ばせてきた。

しかしながら、今、各百貨店が相次いでセミセルフ式の化粧品販売店を出店している。2012年3月にイセタンミラールミネ新宿2店(伊勢丹)が開店したのを皮切りに、エキュート品川の阪急フルーツギャザリング(H2Oリテイリング)、ミリオンドアーズ アトレ川崎店(高島屋)など、続々と店舗が拡大中であり、各社ともに今後数年間で店舗数を増大していく方針である。

イセタンミラー

イセタンミラーイセタンミラー2

 

 

 

 

 

 

 

フルーツギャザリング                       ミリオンドアーズ

フルーツギャザリングミリオンドアーズ

 

 

 

 

 

 

 

こういった、セミセルフ店のターゲットは従来の百貨店での対面式の販売を好まない、20~30代の女性である。カウンセリングは面倒くさいし、対面の接客は圧迫感を感じる、自由に試して買いたいと考える若い女性が増えている。

なぜ今、こういった若い女性にセミセルフ店は人気があるのだろうか。従来型の百貨店の販売方法と比べて検討してみる。

セミセルフ店の大きな特徴として、以下の3点があげられる

① 必要な場合を除いて接客がなく、お客自身が自由に商品を手に取って見ることができる

② さまざまなブランドを比較して見ることができる

③ 自由な売り場の構成・マーチャンダイジング、独自のBA

 

① 必要な場合を除いて接客がなく、お客自身が自由に商品を手に取って見ることができる

これまでの百貨店での化粧品販売では、BAが対面で商品の効果や効能、使用方法や日々のお手入れなどの美容の知識を伝えるカウンセリングを行うのが一般的であった。BA=美容のプロ、というような認識も高かったように思う。つまり、BAは商品と美容に関する知識の情報源という役割を担っていたといえる。しかしながら、近年のインターネットを通じた情報収集(アットコスメに代表される口コミサイトや美容ブログ)やEC店などの一般化により、消費者自身がこういった情報に触れ、情報を自分自身で(ともすればBAよりも詳しく)入手できるようになった。わざわざ時間をかけてBAの話を聞かなくとも商品知識も美容に関する知識も手に入れられる今、BAの情報源としての役割が薄れつつあると言える。

特に若い女性では、コスメを買う際、事前にネットを使って下調べをし、めぼしい商品をいくつかをピックアップして後は実際に触ってみて決める、というような購買プロセスを取っている人は多い。このような点から、接客がなく自由に手に取って見ることができるというセミセルフ店の特徴はフィットしているのではないだろうか。

② さまざまなブランドを比較して見ることができる

最近、特に若い女性では、ファッションにおいて、上から下まですべて同じブランドで固める、といったタイプの女性が少なくなってきている。以前に比べて、ブランドで固める(例えば全てシャネルで統一する)といったことが重要視されなくなっている傾向だ。そういったブランドにこだわって統一することよりも、むしろ、上手にブランドを使い分け、組み合わせて使う、メリハリをつけて自分なりに工夫をして楽しむ、ということに価値が見出されているように思える。

そして、こういった傾向はやはり、化粧品でも同様である。ファンデーションだけは良いものを使いたいので百貨店で検討し、その他はドラックストアで安くする。そのためにどのブランドのファンデーションが一番良いか比較したい、が、各ブランドを回ってカウンセリングを受けるのは面倒、というようなニーズではなかろうか。そのようなニーズを自由に一か所で様々なブランドを比較できるという点でセミセルフ店は満たしている。

③ 自由な売り場の構成・マーチャンダイジング、独自のBA

これまでの百貨店の化粧品売り場といえば、ブランドごとに区切ってあり、どの百貨店に行っても同じブランドに行けばおおよそ同じような売り場が展開されていた。つまり、各ブランドのマーチャンダイジングが強かった。しかしながら、セミセルフ店では平場のような方式を取っている。ブランドごとのブースで展開するというよりは、全体の売り場として構成される。故に各セミセルフ店の特色が出てくる。

例えば、阪急フルーツギャザリングエキュート品川店では、売り場の最前面にポーチや雑貨などを配置し、化粧品店ならではの入りにくさを軽減させている。また、ミリオン・ドアーズアトレ川崎店では、アイテムごとの週間売り上げランキングで並べるなどの工夫をし、複数ブランドをより比較検討しやすい工夫をしている。(日経流通新聞 9月2日 掲載記事より)

また、セミセルフ店のBAはブランドごとではなく、店舗のBAであるという点もポイントだ。店舗のBAであるためBAの接客スタイルは店によって異なってくる。例えば、イセタンミラー新宿ルミネ2店では、伊勢丹で養成してきた専門知識を持った販売員に若年層の接客に長けたルミネ流の販売員教育を行っている。実際、ミラーガールと呼ばれる販売員には百貨店にはないフレンドリーさがあり、商品の説明も丁寧と好評のようだ。(日経流通新聞 9月2日 掲載記事より)

こうしたブランドごとのBAではなく売り場のBAであるという点は、顧客のブランドを比較検討したいというニーズを満たすとともに、店舗ごとの独自性を出すという点でも重要である。

そして、各百貨店は今後数年でセミセルフ店の店舗数を増やしていく計画である。イセタンミラー・阪急フルーツギャザリングは20~30店舗、ミリオンドアーズは8店舗まで拡大していく方向だ。

このような特色と今後の店舗の拡大という点から想像されるのは、今後は百貨店がセミセルフ店のブランド化をすすめるつもりであること、さらに、その先に(ひょっとしたら)独自のPB商品の開発も行っていくのではないかということだ。

このように、今後セミセルフ店は、各店独自のブランディングを進めるであろう。そのために、より独自性のある売り場構成・マーチャンダイジングの強化、接客を含めたサービスの向上が図られると期待できる。

マーケティングリサーチの
ご相談はこちら

ご依頼、ご相談のお問い合わせは
下記よりご連絡ください。
03-5304-0339受付時間:平⽇ 10:00〜18:00