COLUMN
Social 消費

調査事例

Social 消費

2013/09/13
REPORT

 写真デパートなどのギフトコーナーでは、旅行やホテルの宿泊券、レストランのお食事券などの「体験型」のギフトカタログの販売が好調のようです。

 同様に体験型ギフトカタログはブライダル分野での人気が高く、受け取る側に、ただモノを贈る以上に「ワクワク感」や「サプライズ感」を演出でき、より印象に残りやすくなる点が人気を集めています。Source:nanapi

 こうした「モノ消費」から体験を求める「コト消費」へのシフトは、かつて消費者がモノを多く所有することで豊かさを実感していた時代から、物が満ち溢れる時代へ移り変わるとともに、消費者自身が物的欲求だけでは満たされない「心の充足感」、いわば「真の豊かさとは何なのか」を追い求めた結果生まれたものではないかと考えられます。

 今やコト消費は人々の間で当然の欲求として認識されている中、近年、ギフトカタログの中に、募金などのチャリティー商品を取り扱うものが増えてきているようです。人の役に立つためにお金を使う、いわば「Social 消費」という新しい価値観が広がりつつあるように思われます。特に東日本大震災以降、「自分のための消費」から「他人(社会)に貢献するための消費」が注目を集めるようになりました。

 旅行会社が運営する被災地復興ボランティアツアーでは、被災地までの交通と宿泊場所に加え、現地の経済活性化を目的に観光やお土産ショッピングを取り入れたプランが人気のようです。週末だけプランなど、気軽に社会貢献を体験できる点も魅力に映っているものと思われます。Source: 助け合いジャパン

 また、買い物好きの女性の間では「応援消費」と謳い、自分のためにお金を使い、それが回りに回って経済の好循環に繋がるという、「消費のための大義名分」となっているようです。アンテナショップや、環境に優しいペットボトル、1L for 10 Lプログラムで有名なVolvic など「買うことが直接社会の応援に繋がる」消費は更に注目を集めるようになりました。Source: Diamond Online

 「ピース・バイ・ピース・コットン・プロジェクト」というファッションの通信販売企画では、原材料が有機栽培の商品を寄付付きで販売し、その基金をインドの綿花栽培農家に届け、有機栽培への転換を行わせるというものです。農民の健康を守り、土壌汚染を防止し、高付加価値原料の生産により農家は潤い、その結果子供達も児童労働を強要されず、学校に行くことができるという好循環を生み出している点が高く評価されているようです。Source: 日本経済新聞

 人々の間でこれらSocial 消費に見られる「他己実現(=人のために尽くしたい)」への意識が高まっている背景には、ヨガ教室や各種勉強会など「自身の自身による自身のための」自己投資だけでは「自己実現」への欲求は完全に満たされないという心理が起因しているものと思われます。

 心理学者マズローの欲求五段階説では、人々の尊厳欲求が満たされた後の、欲求の最終位に自己実現をあげています。かつての物質(=モノ消費)社会、情報(=コト消費)社会までは、これら欲求段階の構図はうまくはまっていたと言えます。

 しかしながら、現在のネットワーク社会では、これらの構図に変化が生じたものと思われ、人々の欲求構造に関する新たな変化に対して三つの仮説が立てられます。

①     欲求の最終位は自己実現ではなく、その上位に「自己承認」欲求が新たに発生したと考える「欲求六段階仮説」。

②     現在、第四段階層である尊厳欲求と第五段階層の自己実現が逆転したと考える「最終欲求逆転仮説」。

③     社会の発展段階が、第五段階層から第四段階層へと後退したと考える「欲求段階後退仮説」。

 新時代に生まれた三つの新たな欲求構造について、今後探究していきたいと思います。

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