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「涙活」でデトックス
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「涙活」でデトックス

2013/08/23
REPORT

泣きたいときー投稿用あなたも、是非、「涙活(るいかつ)」をしてみませんか?

涙活Official websiteによると、涙活とは「1ヶ月に2~3分だけでも能動的に涙を流すことによって心のデトックスを図る活動」とのことです。

開催される「涙活」イベントでは、「涙ソムリエ=人によって違う“泣けるツボ”を見極めその人の好みに合う泣けるコンテンツを推奨するコンサルター」が選び抜いた「泣ける映画、アニメ、動画、音楽、詩 等」を、涙を流すことを望んで集まった「涙友(るいとも)=一緒に涙を流す事を共有する友人」と共に鑑賞し、思い思いのスタイルで涙を流し、個々のストレス解消の為に活動しているようです。開催されるイベント募集を見ていると、毎回のイベントが即定員オーバーになるほどの人気ぶりで、今あらゆるメディアに取り上げられるほど話題になっています。Source:涙活Official website 

ストレス解消法と言えば、スポーツやショッピング、カラオケに、スイーツ等、あらゆる方法がある中で、何故わざわざ「涙活」なのでしょうか。

涙を流してすっきりしたという経験は誰しも身に覚えはある事だとは思います。私が経験した中でも、子供の頃、両親に欲しいおもちゃを買ってもらえずに大泣きした後に、泣き疲れてぐっすりと眠ったこと。失恋で大泣きして、翌日にはすっきりした思い出等はありますが、どの経験も「涙を流すこと」を目的とはしておらず、どちらかというと「つらい経験」だったという記憶です。ストレス解消に効果的と言っても、能動的に行う行為としては、わざわざ「涙を流す」為に時間を使うのは正直無駄だと思ってしまうのと同時に、「涙活」イベントで、多くの人が一緒に大泣きをしている姿を想像すると、決して「美しくない。(楽しそうではない)」と思ってしまうのは私だけでしょうか。少しばかりの違和感と、日本のストレスレベルの高さを感じ、世界における幸福度ランキングが下位である事を証明するかのようなトレンドが発祥したと思いました。

しかしながら、「涙活」イベントを開催している「セロトニンDojo」の代表である、脳生理学者の有田氏によると、「涙活」があくまでも「健康法」であることを提唱し、脳科学的にもストレス解消に非常に効果がある事から、「涙を流す」事が「喜怒哀楽」の感情の表現以上の効果が期待されるようです。「涙を流すことによって、緊張やストレスに関係する交感神経から、脳がリラックスした状態の副交感神経へとスイッチが切り替わり、疲れている脳をリセットする効果がある」そうです。さらに、涙の種類も多種あるようで、効果があるのは、「他者への共感の涙」であって、自身のつらさや、悔しさ等からくる涙では効果がないそうです。ただ単に、「泣けばいい」という話ではなく、私が経験した「涙をながしたつらい経験」は「健康法」という観点ではあまり効果がなかったという事です。Source:共感の涙が心を癒す、ストレス解消に効く「涙活」って?

「涙を流す」事自体は、決して特別な事ではなく、ヒト特有の感情の発現としての現象です。一つ言えるのは、「涙を流す」為に必要な事象は、「笑う」為に必要な事象より、精神的にも肉体的にもはるかにエネルギーを要するという事ではないでしょうか。私が以前経験した「涙を流したつらい思い出」においても、「涙活」に効果的な「他者への共感のなみだ」においても、そこには、涙腺を刺激するほどの「哀しくてつらいストーリー」、「心を揺すぶる、感動的で素晴らしいストーリー」等がなければいけないのです。それを経験する事、または誰かが経験して他者に伝えるという事は、色々な意味で手間暇もかかるし、お金がかかる事なのです。

その手間暇を必要とせず、余計なエネルギーを使わずに、思いっきり涙を流す事ができる環境が用意されている「涙活」こそが、今多くの人に受け入れられている理由なのではないでしょうか。さらに、現代社会において、ストレスが原因で起こる精神的、肉体的病(やまい)が多数ある中で、「能動的に涙を流す」行為が、一種の「健康法」として推奨されるという事は、多忙な現代社会に生きる私たち社会人にとっては、何て「手軽」で「エコ」な方法ではないかと思います。

すでに、スマフォアプリでは「涙活」に対応した、「泣けるアプリ」が存在しています。恋愛、家族、ペット、会社等ジャンル別の泣ける話が用意されており、スマフォアプリのカテゴリとして確立しつつあります。私も実際に「泣」というスマフォアプリをダウンロードし、「涙活」を試してみました。確かに泣けます。声を詰まらせて、肩を震わせて泣くことができました。大いに泣いて脳のデトックスはできたものの、「誰かが亡くなる」という「死」に関連したストーリーが多かったのが印象です。誰かの本当につらい経験のストーリーを踏み台にして、明日への活力を蓄えるという事が、客観的に考えた時に、「手軽」で「エコ」な健康法である反面、「なんて悪趣味なトレンド」だと矛盾を感じました。

今後、性別年齢問わずに、沢山の人が積極的に「涙活」をしていくのではないでしょうか。「婚活」が一般的な言葉になった今、「涙活」においても今後、ビジネスとして、「涙活アプリ」、「涙活コンサート」、「涙活フェス」、「涙活本」等、多種多様な「泣けるツボ」に対応した、体感するエンタテイメントビジネスとして、今後幅広くひろがっていくのではないのでしょうか。「涙活」コンテンツのユーザーをどれだけ、涙のツボに「慣れさせない」という事も、拡大するポイントになり、さらなる「泣けるつぼ」の研究と、「ジャンル」の拡大が求められてくるのではないでしょうか。「涙ソムリエ」という職業がワインの「ソムリエ」程に、社会で確立される日も、間近?なのかもしれません。

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