先日、株式会社セブン&アイHLDGSの「NEWS RELEASE」にて、『セブンゴールド 金の食パン』の販売個数が4月16日の発売から15日間(4月16日~30日)で65万個を突破したと発表した。
『セブンゴールド』とは、株式会社セブン&アイHLDGSの既存のPB(プライベートブランド)である『セブンプレミアム』のワンランク上として展開する高額PB(プライベートブランド)だ。
セブン&アイの鈴木敏文会長はセブンゴールドの展開理由についてこのように話している。
「6割の人が安さを求めていても、多少高くても品質にこだわる残りの4割の消費者をねらう」(日経MJ5月31日(金)発行紙面より一部抜粋)
この『セブンゴールド 金の食パン』だが、ワンランク上というだけあって、1斤6枚入りで250円(税込)という高額商品である。
しかし、この『金の食パン』には、値段に見合った美味しさとこだわりに満ちている。
自 然でコクのある甘味にするため、北海道産の生クリームと甜菜糖を使用。甘味の奥行きを出すカナダ産はちみつや素材の旨味を引き出す赤穂の天然塩など、素材 を厳選している。弾力あるもっちりとした食感にするため、生地はセブン&アイグループ限定仕様のスペシャルブレンドの小麦粉を100%使用。じっくりと熟 成し、一つひとつしっかりとこねて成型・焼き型に入れて焼き上げているというこだわり様だ。
Souce:株式会社セブン&アイHLDGS「NEWS RELEASE」
PBのイメージといえば、安いが品質はNB(ナショナルブランド)より劣るというイメージを持たれる方も多いのではないだろうか。では、何故、PBでありながら、高額の『金の食パン』が売れているのだろうか。
コンビニ、食パンという視点から調べているうちに次のようなことが見えてきた。
皆さんは、コンビニの客層と聞いて、どんな年代の人を思い浮かべるだろうか。
実は、近年、コンビニを利用する客層は40代以上が半数近くを占めている。下記のセブンイレブンにおける来客年齢階層比をみて頂ければ一目瞭然だが、1989年度には30代までの若年層が80.3%を占めていた。
と ころが、2009年度には55%に落ち込み、40代以上の中高年層が45%を占めている。理由としては、惣菜や生鮮食品の充実、宅配サービスの展開を行う ことによって、主婦層やシニア層の獲得につながった様だ。震災後にコンビニの利便さが中高年層に受け入れられたということも要因としてある様だ。
次に、もう一つ驚くべき事実がある。
それは、年代が上になるほどパンをよく食べているという事実だ。60代以上の男性に至っては55.0%の人がほぼ毎日パンを食べていると回答している。
さて、肝心の美味しさについてだが、日経MJ(5月31日(金)発行紙面にて)が面白い実験を行っている。日経MJが都内で主婦や会社員らに無作為に声をかけ、『金の食パン』と『超熟』を食べ比べてもらった結果、実に74%の人が『金の食パン』が「おいしい」と回答した。
さらには、『金の食パン』を「普段用に買いたい」、「ときどきは買いたい」と回答した人は68%にも上る。
これらの事由が重なり、『金の食パン』が受け入れられ、ヒットへとつながったのではないだろうか。
出だし好調のようにみえるセブンゴールドだが、この先、どのように変化していくのだろうか。今までは、どのコンビニチェーンも個店間では多少の差はあっても、そこまで商品の品ぞろえに差はないように思えた。
し かし、今後もセブンゴールドのような高級PBが発展していくならば、従来通りの安さを売りにしたPBと、信頼性、個性のあるNBに加え、多少高くても品質 にこだわった高級PBという3つの武器を持つことになり、店舗ごとの商品の品ぞろえの差が明確に出てくるようになるのではないだろうか。
例えば、土地柄に合わせ、高所得者が多く住んでいる地域には高級PBを、学生の利用が多い地域には従来のPBをメインに展開するなど、その地域の特色に合わせることができる。
基本的には、本部のきめ細やかなエリアマーケティングの力量が試されることになりそうだが、もしかしたら、近い将来、各店舗の裁量の範囲が拡大する。つまり、店長の力量が今以上に必要になるかもしれない。
余談だが、社内で食パンの食べ比べをしてみた。以下の4つの食パンのうち、どの食パンが良い/おいしいと思うか選んでもらったところ、以外にも、超熟は人気がなく、金の食パンとさっくり食パンが接戦という結果になった。